ドイツ産業連盟、中国との競争に関する提言書を公表

(ドイツ、中国)

ベルリン発

2019年01月24日

ドイツ最大の経済団体であるドイツ産業連盟(BDI)は1月10日、中国との競争に関する提言書を公表した。政府が産業・企業に介入して市場をゆがめているとされる中国に対抗するため、EUとドイツ政府に向けた54項目の要求をまとめた。

BDIのディーター・ケンプ会長は、ドイツとEUにとって、中国による国家主導の経済体制がますます大きな課題となっており、中国は重要なパートナーである一方で、EUが推進する開かれた自由経済に対する競争相手になっている、と述べた。

中国は独自の政治的、経済的、社会的モデルを確立しており、期待に反して、EUと同じような市場経済と自由主義に向かって発展する可能性は低い、とBDIはみている。また、中国はEUやドイツのような開放的な自由市場経済との競争局面に入ったとした上で、現実的な対応策を検討する必要を指摘する。2019年5月の欧州議会選挙を念頭に、ドイツ連邦政府および欧州委員会に対し、中国との競争に当たり、EUをより強固にするよう求めている。

具体的には、EU単一市場の経済政策の枠組み強化を要求、非市場経済国の企業であっても、EUで事業を行う場合は、単一市場の枠組みの順守を求めていくこと、その点をEU域外にも積極的に示していくことを求めている。また、中国国営企業による欧州のテクノロジー企業の買収を管理し、必要に応じて阻止するための新たな管理制度の導入を支持するとした。同時に、ドイツとEUは研究、開発、教育、インフラストラクチャー、将来の技術にさらに多くの投資を行うべきであり、EUは技術革新や自由貿易の促進などに焦点を当てた野心的な産業政策を導入していくべきだとした。

一方、中国に対して、BDIは「中国自身の利益のために、国内市場をさらに開放し、長期にわたって約束された経済改革を精力的に実行すべきだ」と指摘している。

2017年のドイツ・中国間の貿易額は1,870億ユーロで、うちドイツから中国への輸出額は860億ユーロ、輸入額は1,010億ユーロに達する。ドイツから中国への2016年時点の直接投資残高は760億ユーロで、約5,200のドイツ企業が中国で100万人以上の従業員を雇用しているといわれる。BDIによると、中国からドイツへの直接投資残高は2017年末時点で130億ユーロだという。

(増田仁)

(ドイツ、中国)

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