産業界の多くはいまもブレグジットの政府案を支持

(英国)

ロンドン発

2018年12月10日

英国産業連盟(CBI)は12月6日、2020年までの3年間の経済見通しを発表した。CBIは、英国政府とEUとの離脱協定が批准され、整ったかたちで英国のEU離脱(ブレグジット)が完了することを前提に分析しており、GDP成長率を2018年が1.3%、2019年が1.4%、2020年が1.6%と予測した。

CBIのキャロライン・フェアバーン事務局長は「整ったブレグジットによって英国は2年間の着実な経済成長を享受する。ただし、ノー・ディールの場合にはビジネス、雇用、生活水準に深刻な打撃を与える」とした上で、「政府案は完璧ではないが、協議中の提案としては、経済を守り、不確実性を減らし、将来のまともな貿易関係の道を開くことのできる唯一のものだ」とコメントした。また、政府案をめぐって議会が紛糾する(2018年12月7日記事参照)中、解決がなお見えないことで企業がコンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)の実施を前倒しする可能性があることに懸念を示した。

11月28日には、スモールビジネス連盟(FSB)のマイク・チェリー議長が、コンティンジェンシープランの作成、関税や税関手続きで発生するコストに関して、特に中小企業は大企業ほどの対応能力を持たず、さらに不釣り合いな状態となるとしており、「こういった極端な結果への備えがある企業はわずか7社に1社しかなく、現在の明らかな脅威となっている」と述べた。

国内では、スコットランド漁業者連盟(SFF)が政府案に対して、自国水域へのEU漁船のアクセス制限や、クオータ交渉に関して完全な主権が認められないことがレッドラインだとして、EU加盟国による英国水域での漁業権を制限するよう求めており、現行の政府案を歓迎する声明をいまだ発表していない。一方で、北アイルランド農業者連合(UFU)は11月29日のテレーザ・メイ首相との会談後、「慎重に」とはしつつも政府案を歓迎すると発表した。UFUのアイバー・ファーガソン議長は、政府案は完璧ではなく、別の選択肢があるならば検討の余地がなおあることを含ませつつ、「現在協議されているのは、政府案かノー・ディールかの二択」としており、政府案が現状では最も打撃が少ないとの見解を示した。

(木下裕之)

(英国)

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