欧州委、FTAの枠組みで韓国に労働に関する協議要請

(EU、韓国)

ブリュッセル発

2018年12月20日

欧州委員会は12月17日、EU韓国自由貿易協定(FTA、2011年暫定適用開始、2015年発効)の枠組みの中で、韓国の労働に関する取り組みについての公式協議の要請書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発出した。欧州委は、結社の自由と団体交渉権に関するILOの基本原則に対する韓国政府の順守状況と、同分野の2つのILO条約と強制労働に関する2つのILO条約の合計4つが未批准となっていることを問題視。FTAの枠組みではこれまでに前例がない手続きに踏み切った。

日EU・EPAにも類似の条項

EUと韓国はFTAの「貿易および持続可能な開発」章において、独自に労働保護水準を設定できるとしつつも、結社の自由と団体交渉権、強制労働・児童労働の禁止、雇用・職業差別の撤廃という基本的権利に関する原則の尊重、促進、実現を約束。ILO基本条約とILOが「現状に適合する最新の(up-to-date)条約」に分類する条約の批准に向け、引き続き努力するとしていた。

一方、日本とEUの経済連携協定(EPA)においても、労働保護水準に関する類似の条文が盛り込まれている。さらに、欧州議会における同EPA締結の勧告案の採択においては、中道左派「社会・民主主義進歩連盟グループ(S&D)」を中心に、ILOが求める中核的労働基準を定めた条約の一部を日本が批准していないことを課題として指摘する声もあった(2018年11月6日記事12月13日記事参照)。また、欧州委は2018年2月に、市民社会の代表の参加拡大も含めたFTAにおける「貿易および持続可能な開発」章の約束の順守強化を打ち出しており、日EU・EPAの実施においても留意点となりそうだ。

なお、欧州の労働者を代表する欧州労働組合連合(ETUC)は、欧州委による協議要請を強く歓迎する声明を発表。「労働基本権の順守なくして、公平なグローバル化はあり得ない。EUカナダ包括的経済貿易協定(CETA)を含む既存のEUのFTAにおける労働基本権の保護に関する執行状況を評価し、新たな貿易協定には労働基本権が守られていない場合の罰則規定を含む拘束力のある労働条項を含めるべきだ」とした。

(村岡有)

(EU、韓国)

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