最低賃金を22.3%引き上げ900ユーロに

(スペイン)

マドリード発

2018年12月27日

スペイン政府は12月21日、2019年1月からの最低賃金の引き上げを閣議承認した。これにより、最低賃金はこれまでの月額735.9ユーロから22.3%増の900ユーロと、過去40年間で最大の引き上げとなる。

過去40年間で最大の引き上げ幅

この金額は、被雇用者負担の社会保険料と個人所得税を含むグロスベースで、年額換算では、12カ月に賞与2カ月を足した14カ月分の1万2,600ユーロになる(「2019年最低賃金に関する勅令1462/2018」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

政府によると、今回の引き上げにより、スペインの最低賃金はEU平均の80.6%相当に上昇し、小売り・卸、外食・ホテル、一般事務などの給与所得者、農業部門の日雇い労働者、家事労働者をはじめとする約250万人が恩恵を受けるとしている。また、最低賃金労働者には特に女性労働者が多いことから、男女賃金格差の縮小にもつながるとした。

一方、今回の大幅な引き上げは、2019年予算案の交渉において、社会労働党(PSOE)政権が下院第2党の急進左派ポデモスの合意を取り付けるために受け入れた条件の1つでもあったことから、政財界から強い批判が出ている。

スペイン経団連(CEOE)は「賃上げに伴う社会保険料の負担増も含めると、年間21億ユーロの労務コスト増」と反発する。

また、スペイン中央銀行のパブロ・エルナンデス・デ・コス総裁も「近年に例を見ない大幅な最低賃金引き上げは、景気に少なからぬ影響を及ぼすだろう。就業者数の0.8%に相当する15万人の雇用が失われる恐れがあり、本来守るべき若年層などの高失業層の雇用にとっては、逆効果になりかねない」と指摘している。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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