シンガポール政府はTPP11の活用メリットを周知

(シンガポール)

シンガポール発

2018年12月27日

シンガポール貿易産業省は、11月20日にプレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で「環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)」に関して、国内産業界にとっての活用メリットについてあらためて周知した。

プレスリリースによると、TPP11の発効により、カナダとメキシコが新たな自由貿易協定(FTA)の締結国となる。シンガポールからの輸出に当たって、カナダでは99%、メキシコでは88%の品目で関税が削減される。例えば、シンガポールからメキシコ向けの化学品には10~15%、有機化学製品では6.5%の関税が賦課されているが、同協定の発効後に即時撤廃される。サービス分野においては、通信、輸送、エネルギーなどの企業が進出する際に便益を享受できる。そのほか、投資家保護、政府調達への参入機会などがメリットとして挙げられた。

チャン・チュンシン貿易産業相は「同協定内の電子商取引、知的財産に関わる規定は、今後の参加国におけるデジタルエコノミー、イノベ―ションなどの面で大きく貢献する」とした。また、国内手続きが未完了の国に関して、「早急な批准を期待する」とコメントした。同相は8月の国会答弁で、同協定発効はシンガポールのGDPを最大0.2%押し上げる可能性があるとしていた。

産業界向けに普及啓発セミナーを開催

貿易産業省および傘下の経済開発庁(EDB)、エンタープライズ・シンガポール(ESG)は、TPP11の普及啓発セミナーを積極的に開催している。ESGとシンガポール事業者連盟(SBF)は11月28日、TPP11に関するセミナーを実施した。セミナーでは、食品加工分野の企業を主たる対象とし、協定の概要、関税の減免税の利用方法、原産地規則などが説明された。また、締結国向け販路開拓に当たって、具体的な加工食品を事例として、相手国市場の関税率やその他税体系、原産地規則などの具体的な情報収集の方法についての解説が行われた。

中長期的な活用可能性に高い期待

在シンガポール日系企業からみて、TPP11発効による直接的な影響は、現時点で限定的だが、将来の活用への期待は高いようだ。ジェトロがインタビューしたところ、「シンガポールは既にEPA(経済連携協定)、FTAが張り巡らされており、追加的なプラスの影響は限定的」(総合商社)、「保護主義的なセンチメントが高まる中、同協定をてこにサプライチェーン深化に期待」(総合商社)などのコメントが聞かれた。また、各論として、「(国境を越える情報の移転の自由の確保など)電子商取引3原則が確保できたことは大きな意味を持つ」(電気・電子)、「日本向け輸出でのメリットを調査している」(食品)などという回答があった。

(藤江秀樹)

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