米中間選挙、下院での勢力逆転を注視する欧州

(EU、米国)

ブリュッセル発

2018年11月08日

米国中間選挙の結果について様子見の欧州だが、一部有識者は下院で民主党が過半数の議席を押さえたことに注目している。特に親ロシア派とされる下院外交委員会欧州関連小委員会ダナ・ローラバッカー委員長落選の影響で、米国とEUとの関係は転機を迎えるとの指摘もある。

有識者は停滞気味のEU・米国関係の転機と指摘

EU・米国関係の研究者として知られるドイツアスペン研究所のタイソン・バーカー環大西洋・デジタル問題担当ディレクター(元ブランデンブルク社会・安全保障研究所の上級研究員)は11月7日、下院で民主党が過半数の議席を押さえたことについて「下院での勢力逆転はEU・米国関係に変化をもたらす」とツイッターに投稿。特に下院外交委員会の「欧州・ユーラシア・新たな脅威」小委員会で委員長を務めていたローラバッカー候補(共和党、カリフォルニア州選出)の落選の影響を指摘した。ローラバッカー候補は、西欧よりも東欧やロシアの役割を重視、英国のEU離脱について早くから支持を表明するなど欧州政治への独特のアプローチで知られる。

また、バーカー氏は11月7日、今回の選挙結果を踏まえて米系政治誌「ポリティコ」(欧州版)に「民主党が支配する米下院が欧州に意味すること」と題する論評を寄稿、ローラバッカー候補が下院外交委員会の欧州部会長として、欧州・米国関係の重要課題についての審議を阻止してきたことに言及している。具体的には、「クリミア問題」や「ポーランド・ハンガリーの内政問題」「モンテネグロのNATO加盟問題」、2016年から交渉が停滞している「EU・米国包括的貿易投資協定(TTIP)」などを挙げ、今後、下院における民主党の影響力が強まれば、これらの問題がより活発に議論され、欧州の主要問題への関心も復活することになると論じている。

このほか、欧州議会のギー・フェルホフスタット議員〔ベルギー選出、リベラル派「欧州自由民主同盟(ALDE)」代表〕はツイッターに、下院で民主党が過半数の議席を押さえたことについて「すばらしい結果だ。ただ、より注目すべきは多くの女性議員が当選したことだろう。人々はトランプ政権の『分断政治』にうんざりしている」と投稿した。同議員は中間選挙前からツイッターで「投票に行って、歴史を作ろう(Make history, go and vote!)」と呼び掛けていた。なお、同議員は欧州議会・ブレグジット問題対策グループの座長を務めている。

(前田篤穂)

(EU、米国)

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