投資スクリーニング制度で暫定合意

(EU)

ブリュッセル発

2018年11月22日

欧州議会とEU理事会(閣僚理事会)、欧州委員会は11月20日、域外からEUへの投資のスクリーニング枠組みを定めた規則案について、暫定合意に達したと発表した。この規則案は2017年9月に発表されたもので(2017年10月17日記事参照)、今後、欧州議会と理事会による正式な採択を経て公布・発効する見込みだ。

安全保障や公共秩序への影響を懸念

EUは、中国など近年存在感を高める新たな投資国の中には、国家主導型の経済開発モデルを採用し、外国からの投資を制限しながら、国家資金を利用した対外直接投資によって産業戦略目標の達成を目指す国があることを問題視。また、域外の国営企業や政府との関係が深い企業が、域内の先端技術や軍事・民生両方に利用可能な二重用途技術を保有する企業や戦略インフラを買収することでEUの安全保障や公共秩序への影響に危機感を示していた。

今回、合意が成立した規則案の主要点は次のとおり。

  • 加盟国と欧州委員会が域外からの投資について情報交換し、懸念を表明するための協力メカニズムを創設する
  • 域外からの投資に複数の加盟国が関与する場合や、研究開発支援枠組み「ホライズン2020」や欧州衛星測位システム「ガリレオ」などEU全体の利益への影響が予測される場合は、欧州委が意見書を発出できる
  • ベストプラクティスや投資トレンドに関する情報の共有など、投資スクリーニング政策に関する国際協力を促進する
  • 国内の安全保障は各加盟国の責任であり、既存のスクリーニング制度の維持や新制度の導入などは加盟各国が判断する
  • 国内における特定の投資案件の可否の最終判断は加盟各国が行う
  • 企業活動に配慮した迅速な作業と秘密保持に十分配慮する

この合意に当たり、欧州委のセシリア・マルムストロム委員(通商担当)は「相互のつながりと依存を強める世界では、ビジネスに開かれた欧州を維持しつつ、集団安全保障を確保する手段が必要だ」と述べ、早期の採択を呼び掛けた。

(村岡有)

(EU)

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