米国中間選挙踏まえ、外相や主要産業団体が欧州の結束を強調

(ドイツ、米国)

ベルリン発

2018年11月09日

11月6日に行われた米国の中間選挙結果を踏まえて、ドイツ外務省やドイツの主要産業団体から、欧州の結束の重要性を強調する声が相次いだ。

ドイツ外務省は11月7日、地方紙によるハイコ・マース外相へのインタビューを公表した。それによると、マース外相は「今回の中間選挙での選挙運動は、米国社会がいかに分断されているのかを示しており、さらに推進した」と述べた。また、トランプ大統領がその姿勢を変えることは期待できないとした。さらに、「米国は欧州域外の最も重要なパートナーの一国であり続けることに変わりはないが、その関係を再検討する必要がある」とコメントした。米国の国際条約撤退や制裁関税などの措置に対し、欧州結束が唯一の打開策だと強調した。

ドイツ産業連盟(BDI)は同日、「貿易摩擦の終焉(しゅうえん)みえず」と題する声明を発表。ディーター・ケンプ会長は「ドイツ産業界は、米国から厳しい逆風を受け続けることになる。多くの民主党議員もトランプ大統領の通商政策を支持していることから、米国の貿易政策が保護主義から方向転換することは、想像できない。米政府の対立路線は世界経済にとって脅威で、今後も続くだろう」とコメント。一方で、「貿易摩擦が米国企業に対しても利益をもたらすことはなく、米政府の制裁措置が米国内の景気にマイナスの影響を与えるのは時間の問題だ。国家の安全保障にかこつけて、一方的に関税を課すことは誤りだ」と指摘している。また、「欧州からの輸出が、米国の国家安全保障を危険にさらすことはない。米国はWTOの改革に建設的に取り組み、現代的な貿易ルールの構築に貢献すべきだ」とコメントした。

ドイツ卸・貿易業協会(BGA)のホルガー・ビングマン会長も同日、「米国の選挙結果は、現在の米国政権の政策が単純な『運営上の事故』ではなく、多くの国民の同意の下に行われていることを示している。対外貿易政策での不確実性、および自由貿易に反した政策が継続されることになるだろう」と述べた上で、自立した強固な欧州の結束を訴えた。

ドイツ機械工業連盟(VDMA)のカール=マーティン・ベルカー会長は同日、「トランプ政権は過去2年間で保護主義的政策を進めてきた。その結果、世界の自由貿易が大きく損なわれている。選挙後の議員の大多数も、米国の必要な貿易政策の修正に関する展望を示していない。米国もまた、貿易における信頼性の高い多国間ルールから恩恵を受けている。その一方で、他国に対し、自国の理念を押し付けることは、長期的には紛争や経済的損失につながる。米国議会がこれを認識し、貿易問題でトランプ氏に適度に影響を与えることを望む」とコメントしている。

(油井原詩菜子)

(ドイツ、米国)

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