欧州委の秋季経済予測、2018~2019年のGDP成長率を下方修正

(EU、ユーロ圏)

ブリュッセル発

2018年11月09日

欧州委員会は2018年11月8日、秋季経済予測外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表し、実質GDP成長率をEU28カ国、ユーロ圏ともに2018年を2.1%、2019年を1.9%とし、2018年5月に発表した春季経済予測(2018年5月7日記事参照)から、それぞれ0.2ポイント、0.1ポイント下方修正した(表1、2参照)。また、2020年については、EU28カ国は1.8%、ユーロ圏は1.7%との予測を示した。

複数の下振れリスク要因の影響増幅に懸念

欧州委は、複数の下振れリスクを指摘し、その影響が拡大する可能性を指摘した。域外では、米国で予想よりも早く利上げが行われた場合の新興国市場や金融市場への影響に加え、米国と中国の間の貿易関係のさらなる緊張の高まりが中国経済の無秩序な調整へとつながり得るとした。貿易やグローバル・バリューチェーンを通じたEU経済への影響に懸念を示した。

一方、域内では、債務を多く抱える一部加盟国の財政の健全性や、英国のEU離脱交渉を下振れリスク要因に挙げた。欧州委のバルディス・ドムブロフスキス副委員長(ユーロ・社会的対話、金融安定・金融サービス・資本市場同盟担当)は「われわれは注意を怠らず、経済の回復力(resilience)の強化に尽力すべきだ」と強調した。

表1 EU28カ国の経済の見通し

欧州委は、グローバル経済の不透明感や貿易の緊張感の高まり、原油価格の上昇がEUの経済成長の勢いをそぐ一方、給与上昇や投資に後押しされた域内需要を原動力とする成長が続くと分析。2020年までの予測期間において、全ての加盟国で減速傾向にあるものの、経済成長が継続するとの見方を示した。

表2 各国の実質GDP成長率見通し

EU加盟28カ国の2018年の失業率は6.9%、2019年は6.6%、と春季経済予測からそれぞれ0.2ポイント、0.1ポイント下方修正(改善)したが、ユーロ圏はそれぞれ8.4%と7.9%とし、春季経済予測から据え置いた(表3参照)。また2020年について、EU28カ国は6.3%、ユーロ圏は7.5%と予測。雇用は引き続き改善するものの、労働力不足と経済成長の減速により、改善のペースは次第に遅くなるとの見通しを示した。

表3 各国の失業率予測

(村岡有)

(EU、ユーロ圏)

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