業界団体もEU離脱協定案の閣議承認を「最初の一歩」と評価

(英国)

ロンドン発

2018年11月16日

英国の業界団体は11月15日、英国のEU離脱に関わる協定と政治宣言の実務レベルでの合意文書が閣議で承認されたことを受け、相次いで声明を発表した。

英国自動車製造販売者協会(SMMT)のマイク・ホーズ会長は「合意はノー・ディールによる破壊的な結果を回避し、移行期間を確保する好ましい一歩。ただし、最初の一歩にすぎず、企業は競争力のある将来の確保のために確実性と希望を求める。摩擦のない貿易のみが産業の将来に成功をもたらす」とコメントした。

また、英国製薬工業協会(ABPI)は、英国がEUから離脱する2019年3月29日以降も、移行期間によって企業が患者に対して医薬品を提供できることに歓迎の意を表した。マイク・トンプソン会長は「まだやるべきことはたくさんある。今後の通商協定に向け英国とEUの関係者と連携していく」としている。

全国漁業団体連盟(NFFO)は、今回の合意を「独立海洋国家としての将来に向けた極めて重要な一歩」と評価した。ただし、英国水域へのアクセス取り決めや漁獲量の割り当てには課題が残るとしている。移行期間の終了後は、EUの共通漁業政策(CFP)は適用されず、独自のルール作りができるようになるとする立ち位置だ。EUとの将来関係については、自らの漁業政策を維持しながら、他国との共同水域での漁獲量を毎年交渉で決定するノルウェー型の漁業政策を参照すべき例として提示している。

漁業政策に関しては、11月14日の閣議中にスコットランド系の議員らから漁業への懸念を示す文書が提出されており、スコットランド漁業者連盟(SFF)がこの閣議への干渉を支援する声明を発表(2018年11月16日記事参照)。離脱協定案の発表後にも再び、独立した海洋国家としての自治権の尊重を求める声明を発表した。NFFOの声明は、英国水域におけるEU船舶の取り扱いを課題としている点で主旨は一致するものの、合意に関して前向きな評価もしており、同じ漁業分野でも地域による見方の違いがみられる。

(木下裕之)

(英国)

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