最低賃金を2019年1月から7.9%引き上げ予定

(ルーマニア)

ブカレスト発

2018年10月09日

オルグツァ・バシレスク労働相は9月24日のテレビ番組にて、グロスの最低賃金(月額)を2019年1月1日から2,050レイ(約5万7,400円、レイは通貨単位レウの複数形、1レウ=約28円)に引き上げる予定だと述べた。この賃上げが実施された場合、現在の最低賃金である1,900レイ(2018年1月1日改定)から7.9%の上昇となる(表参照)。また、他の欧州諸国との賃金水準の比較を容易にするため、今後の最低賃金の改定はレイではなくユーロ建てで算出される可能性があるとした。

表 ルーマニアにおける最低賃金の推移

これに関し、ルーマニア最大の労働者連合「カルテル・アルファ」のボグダン・ホッス代表は、「政府との交渉の結果、最低賃金は1年に150レイずつ段階的に引き上げられ、2022年には月額2,500レイまで上昇する見込み」と述べた。ルーマニアの労働者の約半数は最低賃金で働いており、賃金改定を歓迎する声が聞かれる一方、企業側の多くは急激な賃金の上昇を危惧している。

当地進出の日系製造業からは「ルーマニアでの頻繁な最低賃金改定には既に慣れているが、毎回、従業員の給与体系全般を見直す手間がかかる。また、短いサイクルでの変更で、長く働いている従業員と新規採用者の給与水準に整合性が取れなくなることもある」との声が聞かれる。政府は2018年1月、「税制革命」と銘打った唐突な社会保険制度変更および最低賃金改定を実施したばかりで、計画性のある制度構築が求められている(2017年11月22日記事参照)。

2017年のルーマニアのGDP成長率は前年比6.9%と、EU内ではアイルランドに次ぐ伸び率だった。一方、その支えは産業の成長よりも、最低賃金上昇による手取り増加分が内需(消費)に向かうところが大きい。ルーマニアのインフレ率は現在、前年比プラス5%前後の高い水準を推移しており、ルーマニア中央銀行は2018年に入って3度政策金利を引き上げている。今後も利上げは継続されるとみられ、景気後退リスクになりかねない。

(水野桂輔)

(ルーマニア)

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