欧州議会、次回・欧州理事会での議事運営めぐり紛糾

(EU、英国)

ブリュッセル発

2018年10月03日

欧州議会は10月2日、ストラスブールで開催されている本会議(会期:10月1~4日)で、次回欧州理事会(EU首脳会議、10月18~19日開催予定)での優先すべき主要議事について審議した。「北アイルランド国境問題」を含む英国のEU離脱(ブレグジット)問題への対応ではEU側の一致(欧州委員会の交渉方針支持)が確認されたが、「難民・移民問題」については、一部の議員から、加盟国間での結束の欠如と、2018年下期(7~12月)のEU議長国を務めるオーストリアの議事運営姿勢に対する批判の声が上がった。

EU議長国・オーストリアの姿勢を疑問視する声

欧州議会・本会議の冒頭、EU議長国あいさつに立った、オーストリア連邦政府のユリアーネ・ボグナー=シュトラウス女性・家族・青年相は、次回の欧州理事会で「難民・移民問題を主要議題に据える」と語ったが、その後に演説を行った欧州議会の各主要政党代表者からは「ブレグジット問題」についての本格的進捗を重視する声が集中する結果となった。

他方、一部の欧州議員からは「難民・移民問題をめぐり一致できないEUの現状への批判」と「難民・移民問題や社会政策に対するオーストリアの議長国としての姿勢に責任を問う声」が相次いだ。多くの欧州議員がさらに、EUで「法の支配」「司法権の独立」をめぐり問題視されているポーランド(2017年7月31日記事参照)、ハンガリーに対する「EU基本条約」第7条(法の支配、民主主義などの違反に対する制裁)適用をめぐるEU議長国・オーストリアの姿勢を疑問視する声も出ている。

なお、欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長は「難民・移民問題をめぐる責任の押し付け合いはやめにしよう」とEU首脳に呼び掛けていたが、「難民・移民問題」は「ブレグジット問題」と比較しても、EU加盟国間の溝は深く、議論収束には相当の時間を要するものと考えられる。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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