IMFの世界経済見通し、貿易摩擦で米中の成長率を下方修正

(世界)

国際経済課

2018年10月11日

IMFは10月9日発表の「世界経済見通し外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」で、世界経済の成長率(実質GDP成長率)を2018年、2019年とも3.7%とし、7月の見通しから両年とも0.2ポイント下方修正した(表参照)。米国による対中輸入2,000億ドル相当への追加関税など、これまでに実施された貿易制限的措置によって、米国や中国、ASEAN5カ国(2019年)、メキシコ(2018~2019年)の成長率が下方修正された。

表 世界および主要国・地域の経済成長率

ユーロ圏は2018年前半の経済状況が予想外に弱かったことを受け、2018年の成長率が下方修正された。英国の見通しは据え置かれたが、2019年3月末のEU離脱後もEUとの間でゼロ関税が維持されることが前提とされている。その他、世界的な金融引き締めなどを背景に、インド(2019年)やブラジル(2018~2019年)の成長率が下方修正された(注)。一方、原油価格上昇の恩恵を受けるロシアの2019年の成長率は上方修正された。

貿易摩擦の激化は世界経済を最大0.8ポイント下押し

IMFの試算(添付資料参照)によれば、米国が全ての対中輸入および自動車・同部品に追加関税を課し、企業心理が悪化して投資が減退し、金融市場に負の影響が及ぶ最悪のシナリオ(4)の場合、世界経済の成長率は2020年に0.82ポイント下押しされる。同様に、米国は最大0.95ポイント、中国は1.63ポイント、日本は0.66ポイント、ユーロ圏は0.47ポイント、成長率が下押しされる(中国は2019年、他は2020年の下方修正幅)。

どのシナリオにおいても、中国や米国からの調達が自国からの調達に切り替わることで短期的には成長が上振れする国・地域も存在するが、中長期的には米国・中国での国内調達が可能となり、プラスの影響は消えてしまうと試算されている。

(注)下方修正の要因としてはそのほかに、原油価格上昇(インド)、トラック運転手のストライキ(ブラジル)なども挙げられている。

(明日山陽子)

(世界)

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