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アジア太平洋の経済統合、セミナーで米国の役割を再確認

(米国)

ニューヨーク発

2018年10月24日

ジェトロは「日本と米国はアジアの経済統合をいかにかたち作るか」と題するセミナーを10月16日、ワシントンで戦略国際問題研究所(CSIS)と共催した(注1)。

基調講演を行った石毛博行ジェトロ理事長は、アジアでもデジタルエコノミーが興隆しており、新たなルール形成が必要になっているところ、米国抜きでルール形成が進められようしていることに懸念を表明し、米国にはルール形成をリードしてほしいと呼び掛けた。同時に中小企業や全ての労働者がグローバリゼーションの恩恵を享受できる、保護主義に迎合しない包摂的な通商政策の必要性を訴えた。また、米中貿易戦争の深刻な影響に警鐘を鳴らすとともに、日本が3極貿易相会合の場などを活用して問題解決に貢献できる可能性についても言及した。

アジア太平洋地域の経済統合に関するパネルディスカッションでは、エイミー・シーライトCSIS東南アジアプログラム上級アドバイザーは、米国抜きで同地域の経済統合が進むことは、「デジタル経済をはじめとした新しい通商ルールの形成に参加できず、米国にとって大きな機会の損失につながる」と述べた。セミナーの聴衆も、会場での速報式アンケートでトランプ政権の通商政策がアジアに与える最も大きな影響として、「米国抜きで進む地域経済統合」を選んだ(注2)。

現在最も勢いのあるアジア太平洋地域のイニシアチブとして聴衆から選ばれたのは「環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)」だった(注3)。他方、パネリストからは中国の「一帯一路」の存在感の大きさを指摘する声が多く上がった。パネリストのアピラディ・タントラポーン元タイ商業相は、「アジアの経済統合の観点からみた時に、輸送手段、マーケットアクセスの点で非常に大きな影響を与える」と述べた。シーライトCSIS上級アドバイザーは、CPTPPは今後の世界の通商政策を占う重要な協定と評価する一方、「一帯一路」には過度な期待が寄せられているとの認識を示した。また、一部の「一帯一路」参加国は中国に対して多額の負債を抱える状況に陥っており、同政策に対して懐疑的になっていると紹介した。モデレーターのマイケル・グリーンCSIS上級副所長(アジア担当)兼日本部長は、スリランカとモルディブの港湾の運営権が中国に渡り、軍備化が進められていることを引き合いに出し、「一帯一路」はインド太平洋地域における安全保障上の脅威になっていると述べた。

米国ビジネス業界からの視点によるパネルディスカッションでは、チャールズ・フリーマン米国商工会議所アジア担当シニアバイスプレジデントが、「トランプ政権は中国を念頭に製造業の国内回帰を促す通商政策を打ち出しているが、中国から米国外の東南アジアやメキシコなどにサプライチェーンがシフトされる可能性がある」と指摘した。バーバラ・ワイゼル元米通商代表部(USTR)代表補は「終わりが見えない米中貿易戦争の中、アジアにおけるビジネス環境は不確実性を増し、企業は事業計画を立てるのが難しい状況」と分析した。

セミナーの最後に行われた、ランチョン・スピーチで演台に立ったジュリー・チャン国務省日本部長は、インド太平洋地域において日米同盟は平和と安定をもたらす要であり、自由で開かれたアジア太平洋戦略の推進には日本の協力が不可欠と述べた。また、米国の対日貿易赤字が世界3位であることに触れ、「日米物品貿易協定(TAG)の交渉開始は両国にとってよりバランスの取れた貿易を目指すための重要なステップ」と述べ、米国から日本への輸出促進と、日系企業のさらなる投資を歓迎する考えを示した。

(注1)同セミナーは10月12日のテキサス州ダラスに続いて実施した。前半のパネリスト、太田泰彦日本経済新聞論説委員、アピラディ元タイ商業相、ワン・ヤン北京大学教授の3名はダラスでのセミナー(2018年10月15日記事参照)に引き続き登壇した。

(注2)選択肢は、(A)米国企業にとってバランスの取れた貿易の増加、(B)アジア太平洋地域における保護主義の増加、(C)米国抜きで進む地域経済統合、(D)大きな影響はない、の4つ。

(注3)選択肢は、(A)CPTPP、(B)東アジア地域包括的経済連携(RCEP)、(C)ASEAN経済共同体(AEC)、(D)一帯一路、(E)その他、の5つ。

(須貝智也)

(米国)

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