欧州産業連盟、「合意なき離脱」回避に向け緊急提言

(EU、英国)

ブリュッセル発

2018年10月16日

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は10月15日、次回の欧州理事会(10月17~18日開催予定)に向けて「合意なき離脱」を回避すべきとする意見書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を12日付で欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長に提出したことを発表した。同連盟ピエール・ガタズ会長は「合意なき離脱は誰の利益にもならない」「政治家は英国が秩序あるEU離脱を実現できるよう、移行期間を含む合意に向けて主導性を発揮すべき」と訴えた。

企業に必要なのは予見可能なビジネス環境

ビジネスヨーロッパはまず、「英国の無秩序なEU離脱の回避が(次回の欧州理事会に向けた)最優先課題」との認識を示し、「合意なき離脱シナリオ回避に向けて最大限努力せよ」と、交渉責任者にハッパを掛けた。

また、先々をにらんだ意思決定を求められる企業にとって、「予見可能性」と「ブレグジットに伴う貿易・投資への影響を抑えるための公平な競争環境」が必要として、(英国がEUを離脱する)2019年3月まではEU・英国の将来関係に関わる交渉を開始できない中、「現状維持のために十分な移行期間を含めた離脱協定についての合意形成」が重要と指摘。EU・英国の双方が適切な批准・承認手続きに対応できるための時間的な余裕も必要としている。

また、EU・英国の将来関係について、ビジネスヨーロッパは「できる限り緊密」な関係の維持を求めると同時に、自由貿易協定(FTA)を想定した場合、「(これまでの)関税同盟によるスムーズな通商関係や、単一市場のような法制度の整合性は期待できない」との厳しい認識も示した。英国は、「法制度における独立性」を取るのか、「EU市場への包括的アクセス維持」を取るのか、最終判断を迫られるとした。

このほか、EU・英国の企業投資を支える従業員の相互就労の問題については、「高度人材の就労にとって極めて重要な点」との認識を示した。ビジネスヨーロッパは、EUの企業内転勤(ICT)指令がEU域内の投資促進のために、第三国(EU域外国)企業にもその法的効果の適用可能性を認めていることから、2019年3月30日以降英国が第三国となった後も、英国企業やその従業員がEU域内でこれまで同様に活動することができる点を挙げ、EUも同様の待遇を英国政府から得られることが重要と指摘した。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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