欧州委、アジアとの連携強化のための戦略を採択

(EU、アジア)

ブリュッセル発

2018年09月21日

欧州委員会とEU外務・安全保障上級代表は9月19日、欧州とアジアの連携強化のための包括的戦略に関わる共同コミュニケーション(政策文書)を採択した。この中で、EUとして「運輸」「エネルギー」「デジタル(情報通信)」「人材」の各分野で、アジアとのネットワーク構築を目指す方針を示している。また、アジアの国々や機関とのパートナーシップ形成のための機会創出や、こうした分野での投資を支援するための持続可能な金融システムの整備にも言及。欧州委は10月18~19日にブリュッセルで開催予定のアジア欧州会合(ASEM)でも、この内容について協議する考えも明らかにしている。

EUの価値・基準を浸透させる意図も

EU側には「アジアの成長力」を取り込むことが、EU域内の成長や雇用創出につながるとの期待感がある。その一方で、今回の政策文書には、各分野においてEUの価値・基準をアジアにも浸透させる意図がうかがえる。欧州委のユルキ・カタイネン副委員長(雇用・成長・投資・競争力担当)は、今回採択した包括的戦略に基づいて構築される社会基盤(インフラ)ネットワークに求める要素として「相互運用可能性」「財政・環境面での持続可能性」などを挙げ、環境政策や社会政策におけるEU基準との整合性を重視する考えを強調。特に公共調達プロセスの公開・透明性を重視する姿勢を示し、EUとしてアジアのインフラ市場における「良き統治(グッド・ガバナンス)」や「公平な競争条件」を確保する考えを示唆した。

「運輸」分野では、EUには「汎欧州運輸ネットワーク(TEN-T)」と呼ばれる共通のロジスティクス基盤整備プロジェクトが存在するが、今回の発表でも、「TEN-Tをアジアのネットワークまでつなげる」方針を打ち出している。また、「デジタル」分野でもEUの「デジタル単一市場(DSM)」(「特集「EUデジタル単一市場」参照」)がアジアとの基盤連携の「青写真」になるとの見解を示している。

連携方法については、EUは(地域単位の連携ではなく)アジア各国との2国間パートナーシップを追求するとしている。特に中国については、今回発表された政策文書の中でも、「EUとしては既存のインフラ整備プロジェクトでの連携を強化すべき」としつつ、同時に「(公正な)市場アクセスや公平な競争条件の確保の原則」や「国際基準に基づくプロジェクト実施の促進」を掲げた。

(前田篤穂)

(EU、アジア)

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