ガソリン車より大幅に割安な電気自動車の燃費

(米国)

米州課

2018年08月10日

世界有数の原油生産国である米国では、ガソリン価格は日本の半分程度と安い。しかしその米国で、電気自動車(EV)の燃費(走行コスト)がガソリン車よりさらに安いことが、エネルギー省(DOE)のデータで分かった。州別では、電力料金が安いワシントン州がEV走行の最大のメリットを享受している。

DOEのデータ、州別ではワシントン州が最安

同一距離を走行するのに、ガソリン車が得か、EVが得かは、それぞれの地域のガソリン価格や電力料金によって異なるため、これまで単純比較ができなかった。エネルギー省は、州ごとのガソリン価格と家庭用電力料金に基づき、EVの走行コストを「e-Gallon」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますとしてウェブサイトで公開している。これは、既存のガソリン車が1ガロン(約3.8リットル)で走行できる距離を同程度のサイズのEV(注)で走行する場合、その充電に必要となる電力料金を示している。

DOEによると、7月21日時点での全米平均の「e-Gallon」は1.17ドルで、同日時点のレギュラーガソリン価格(1ガロン当たり)2.87ドルと比べて6割も安い。さらに、これを州別にみると、ワシントン州の「e-Gallon」は、0.89ドルと全米最安で、同州のレギュラーガソリン価格3.33ドルと比較して約75%も安い。すなわち、ガソリン車の4分の1のコストで、EVが走行できる。ワシントン州は発電部門において水力発電の割合が77%に達しており、家庭用電力料金が2018年5月時点で1キロワット時(kWh)9.70セントと安いためだ。

一方、カリフォルニア州は「e-Gallon」自体は1.46ドルだ。同州の家庭用電力料金は18.91セントと割高だが、レギュラーガソリン価格が3.54ドルとワシントン州よりもさらに高いため、ガソリン車と比べるとEV走行のコストが相対的に安くなる。

夜間のオフピーク充電でさらに割安に

DOEが「e-Gallon」の算出で使っている家庭用電力料金は、米国エネルギー情報局(EIA)が公表している州別電力料金を基にしている。しかし通常、EVユーザーが家庭で充電するのは夜間のオフピークの時間帯だ。例えば、カリフォルニア州の電力会社PG&E(パシフィック・ガス・アンド・エレクトリック)が平日の午後11時から午前7時までの間で設定している電力料金は12.7セント(夏季)と昼間のピーク時の4分の1だ。従って、このオフピークに充電すれば、実際の走行コストはさらに安くなる。

ガソリン価格にはこうしたオフピーク料金制がないこと、原油市況の変動を受けて価格が大きく変動しやすいこと、さらに、道路財源として連邦や州の燃料税が付加されることなど、デメリットが多い。

EVの走行コストがガソリン車と比べてはるかに安いことが、こうした州でのEVの普及を後押ししている。2017年のEVの販売シェアを州別にみると、カリフォルニア州5.02%、ワシントン州2.51%と、全米1位、2位を誇る。

(注)DOEがe-Gallon算出の対象にしたEVは、テスラ「モデルS」、日産「リーフ」、シボレー「ボルト」、BMW「i3」、フォード「フュージョン エナジー」の各2015年モデル。

(木村誠)

(米国)

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