新燃費測定基準への移行を前に7月の新車登録が急増

(スペイン)

マドリード発

2018年08月23日

スペイン自動車工業会(ANFAC)の8月1日付発表によると、7月の新車登録台数は前年同月比19.3%増の13万1,176台となった。2018年上半期は10.1%増で、バカンス期に入った7月の新車登録の急増は異例だ。8月も引き続き大きく増える予想がされている。

ANFACは急増の理由として、9月からの新燃費測定基準の本格導入を挙げている。EUでは、フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題をきっかけに、標準的な測定として使用してきた「新欧州ドライビングサイクル(NEDC)」から、より実走行状態に近い計測結果が得られる「国際調和排ガス・燃費試験方法(WLTP)」への切り替えを進めている。

欧州委員会はWLTPの導入に1年間の移行期間を設け、2017年9月の施行時点では新たに発売される新車種のみを適用対象としたが、2018年9月以降は新車登録される全ての車が対象となる。

ディーラーが在庫を新古車として販売

WLTPによる燃費認証を受けていない新車は9月からは販売できなくなるため、各ディーラーは7~8月、在庫一掃のため大幅な値引きを行った。

一方で、ディーラー店による新車登録も急増した。在庫にナンバープレートを付けて新古車とし、WLTPの適用を受けない中古車市場で合法的に販売できるようにする苦肉の策だ。7月の販路別での販売を牽引したのは企業向け(前年同月比29.5%増)だったが、その多くはディーラー店による登録とされる。

その結果、7月の人気上位10車種には日産「キャシュカイ(デュアリス)」(1位)、ルノー「キャプチャー」(8位)、VW「ティグアン」(9位)と、価格帯がやや高いスポーツ用多目的車(SUV)が3車種もランクインする異例の状況となっている。

なお、新測定基準では従来の方式よりも燃費が10~20%下がるとされる。スペインの税制では、走行距離1キロ当たりの二酸化炭素(CO2)排出量が120グラム未満の乗用車は新車購入時に課せられる自動車登録税が免除されているが、新基準の下では多くの車種が排出量120グラムを超える。政府は欧州委のガイドラインに従い、急激な税額の上昇が生じないよう2018年内は課税の猶予措置を適用することにしている。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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