EU、米国の対自動車・貿易制限措置のリスクを指摘

(EU、米国)

ブリュッセル発

2018年07月03日

欧州委員会は7月2日、米国商務省に対し「自動車・同部品輸入に関する232条調査」(2018年5月25日記事参照)についての意見書を提出(出状:6月29日付)したと発表した。この中で、欧州委は1962年通商拡大法に基づく同調査について「(鉄鋼・アルミニウムに対する追加関税賦課と同様に)事実に基づく正当性はなく、国際貿易ルールにも違反する」と断じた。

2,940億ドル相当の米国輸出に悪影響と推定

欧州委の見解によれば、「EUと米国の自動車産業は概して異なる市場分野に特化しており、EUからの輸入が米国の経済・産業の脅威となることはない」という。また、(米国政府が)貿易制限措置を取った場合、「米国のGDPに130億~140億ドル相当の悪影響を及ぼし、米国の自動車・同部品産業の好調な基盤を毀損(きそん)する懸念がある」と、欧州委は指摘する。(米国で事業展開する)欧州自動車産業は既に米国のサプライチェーンに組み込まれており、その米国での生産拠点における直接雇用は12万人、ディーラーなどの間接雇用では42万人の雇用創出に貢献しているという。

また、欧州委は乗用車、スポーツ用多目的車(SUV)、バン、小型トラックなどを含む自動車や同部品の輸入に関する232条調査の結果、米国が貿易制限措置を発動した場合、それに対する報復措置により、2,940億ドル相当分(2017年の米国輸出の19%)の米国の輸出に影響が及ぶと推定している。

米国政府が進める「自動車・同部品輸入に関する232条調査」については、欧州自動車工業会(ACEA)も5月28日に懸念を表明している。

なお欧州委は、米国商務省が7月19~20日に開催予定の公聴会に、EUとして参加することを要請したとしている。

(前田篤穂)

(EU、米国)

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