EEU、モノのトレーサビリティー制度の年内導入を目指す

(ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、アルメニア)

欧州ロシアCIS課

2018年07月31日

ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア、キルギスの5カ国が加盟するユーラシア経済連合(EEU)のユーラシア政府間評議会の会合が7月27日、ロシアのサンクトペテルブルクで開催された。同会合ではデジタル化による複数の産業分野での統合推進、EEU域内での製品の製造・流通経路の追跡(トレーサビリティー)のためのマーキング制度(注1)の年内導入、アンチダンピング(AD)課税(注2)や経済制裁への対抗措置などに関する議論が行われた。

同評議会は加盟国の政府首脳(首相級)で構成。2018年にEEU議長国を務めるロシアのドミトリー・メドベージェフ首相は会合で、2018年第1四半期の域内貿易額は前年同期比16.4%増加し、EEU共通の課題である消費者物価の抑制と年2%以上の経済成長率の実現に向け引き続き取り組むと発言した。ロシアから加盟国に対して、デジタル化を通じたa.越境電子商取引(EC)、b.モノのトレーサビリティー、c.輸送路の創設、d.産業協力、の4つの具体的提案を行っており、b.に関しては、政府の効率的な管理、消費者保護、ビジネス環境改善に資するとして、加盟国にマーキング制度の年内導入に向けた批准作業を要請した。

対域外政策については、(米国を念頭に)域外国による加盟国メンバーへの貿易制限措置にはWTOの枠内で共同して対抗策を取ることを提起。中国、イランとの経済貿易分野での合意(2018年5月18日記事参照)の批准作業を各国が速やかに進めることを要請。また、今後EEU域内での不当廉売行為へのAD課税の運用に向けた研究を積極的に進める方針を明らかにした。

(注1)軽工業品を中心に共通のタグを付け、バーコードなどで流通経路を把握する。毛皮製品など一部で既に実施されている。

(注2)ロシア、ベラルーシ、カザフスタンの製造業者からの申し立てを受け、ユーラシア経済委員会は2018年5月29日、欧州産除草剤に対しAD課税を決定した。しかし、カザフスタン政府が拒否権を発動し発効していない。

(高橋淳)

(ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、アルメニア)

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