産業界は日EU・EPAで輸出拡大を期待

(オーストリア、EU、日本)

ウィーン発

2018年07月19日

オーストリアの産業界は7月17日に署名された日EU経済連携協定(EPA)について、日本への輸出を拡大する好機と歓迎している。

オーストリア連邦産業院(商工会議所に相当)のハラルド・マーラー総裁は、「EUは日本とのEPAの署名により、市場開放を支持し、(市場の)孤立に反対の立場であることを示した。世界では保護主義が台頭し、貿易戦争の脅威にさらされている。EPAが欧州議会で速やかに承認されることが重要だ」とコメントした。また、輸出主導のオーストリア企業、特に直接または間接的に輸出している中小企業は、関税の撤廃や手続きの簡素化によりコスト削減が進みEPAの恩恵を受ける、とした。

オーストリア産業連盟(経団連に相当)のクリストフ・ノイマイヤー事務局長は、「日EU・EPAは、保護主義政策に対する重要なシグナルであり、EUと日本双方にとって成長と雇用創出の大きなチャンスだ」と述べた。

デジタル化・経済立地相のマルガレーテ・シュラムベック氏は、同EPAが日EU間のイノベーションと技術の移転を促進するものと歓迎の意を表明。「オーストリア製品は日本市場で人気があり、日本で成功しているオーストリア企業は多い。ワイン、食肉、濃縮果汁、木材、スキー・スノーボードシューズや革靴などの輸出企業は特にEPAの恩恵を受けるだろう」と述べた。現在、オーストリア企業1,000社が日本とビジネスを行い、70社が日本に拠点を置いているという。

他方、労働者、雇用者を代表する連邦労働院のレナーテ・アンデアル総裁は、「EPAの署名により、経済のグローバル化をより公正なものにするチャンスが失われた」と述べ、食品、健康、消費者保護、労働基準の低下について懸念を表明した。

アジアでは中国に次ぐ貿易相手国

オーストリア統計局によると、2017年のオーストリアの対日貿易は輸出が13億8,500万ユーロ(前年比4%増)、輸入は21億5,000万ユーロ(8.7%増)で、6億2,000万ユーロの貿易赤字となっている。EU加盟国との貿易が多いため日本は輸出先として19位、輸入元としては15位だが、アジアでは中国に次ぐ貿易相手国だ。主な対日輸出品目は自動車(2017年輸出額の19.8%)、金属製品(9.3%)と産業用機械(6.5%)、主な輸入品目は自動車(2017年輸入額の27.0%)電気・電子機器(14.8%)と化学品(12.1%)となっている。

(田中由美子)

(オーストリア、EU、日本)

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