改正税関法、税関職員に知財侵害疑義商品の差し止め権限を付与

(メキシコ)

メキシコ発

2018年07月02日

メキシコ政府が6月25日に官報公示した税関法の改正(2018年6月28日記事参照)の目的の1つには、税関当局の違法輸入の取り締まり権限を強化することがある。特に注目されるのが、知的財産権侵害が疑われる商品を税関で差し止める権限を税関に付与したことだ。

税関法第144条は、税関当局の権限を規定しているが、今回の改正で追加された第XXXVII項は、税関職員に対し著作権や産業財産権を侵害することが疑われる商品を税関で差し止める権限を付与するもので、同職権の行使に当たり、税関職員は連邦検察庁(PGR)、もしくは産業財産権庁(IMPI)といった知財侵害品の取り締まり管轄当局の職務を補佐する機能を果たすとしている。

税関では今回の改正が行われる前から、知財権侵害が疑われる商品の輸入通関を最長で72時間差し止め、その間に権利者に通知をし、PGRやIMPIに対する申し立てを行って侵害品を押収する手続き取ることを促している。商標については、対象商品の輸入者が申告する商標関連の識別情報を基に違法な輸入を察知し、差し止める体制になっている(2014年8月21日記事参照)。ただし、今回の改正前までは税関職員に対して法律で明確に知財権侵害疑義商品の差し止め権限が付与されていたわけではなく、あくまで税関が事実上の予防措置として行っていたものだ。

今回の税関法改正は、税関職員が持つ知財権侵害疑義商品の差し止め権限を明文化したが、税関職員に対して同商品の押収権限を付与しているわけではない。従って、権利者からのPGRやIMPIに対する申し立てがない限りは、税関職員に最終的な知財侵害品の押収権限はないと理解される。

CPTPPの規定に対応

今回の改正は、メキシコが5月23日に他国に先駆けて批准した「包括的および先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP、いわゆるTPP11)」の知的財産権の章が規定する内容まで、メキシコの税関当局の権限を高める目的があるとみられる。同協定の第18.76条は、加盟国が知財侵害品に対する国境措置をさまざまな点から強化することを定めている。同条第5項は「職権による国境措置の開始」にも言及しているため、今回の法改正が最終的に知財侵害品を押収する権限までは税関職員に与えていないものの、「国境措置を職権により開始」していることには違いなく、同規定に適合しているといえる。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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