懸念される労働法改正による影響、施行時期は未定

(タイ)

バンコク発

2018年07月12日

タイ政府は現在、労働法の改正作業を進めている。同改正により、20年以上の勤続労働者に対する解雇補償金が増額される見込みだ。

解雇補償金の増額で、企業に負担の見込み

タイ労働省とバンコク日本人商工会議所(JCC)労務委員会は7月3日、労働法改正に関する協議を行った。同協議に出席していた労働省労働保護福祉局のアナンタチャイ局長によると、タイ政府は現在、労働法の改正案を審議中だ。同改正案は労働省による確認を経て、内閣府に提出され、そして国民立法議会(NLA)で審議・可決される予定。

同改正により、20年以上の勤続労働者に対する解雇補償金が、従来の300日分から400日分に増額される見込みだ。これに伴い在タイ日系企業は、会計上の負担が増加するなど、事業運営上の対応が求められる。例えば、従業員3万5,000人を抱える日系企業A社は「会計上の負担は7億4,300万バーツ(約24億5,190万円、1バーツ=3.3円)に及ぶ」と指摘する。そのため、JCCは労働省に対し、日系企業が円滑に準備できるよう、余裕を持った改正スケジュールと、内容の配慮を要望している。

この点についてアナンタチャイ局長は「改正法案はNLAでの可決を経て、官報掲載30日後に施行される予定」と話した。しかし現在、NLAでは300以上の法案を審議しており、同改正案の審議には時間を要することが想定され、具体的な施行時期は未定だ。

他方、同局長は「JCCからの要望は真摯(しんし)に受け止め、改正後の新制度への円滑な移行のための経過規定について検討したい」と発言している。

(田口裕介)

(タイ)

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