米ロ首脳会談、トランプ大統領が欧州へのガス輸出に意欲

(ロシア、米国)

欧州ロシアCIS課

2018年07月17日

ロシアのプーチン大統領は7月16日、フィンランドの首都ヘルシンキで米国のトランプ大統領と首脳会談を行った。両首脳は政治、核軍縮、国際問題、経済など広範な分野で意見交換を実施。ロシア大統領府によると、両首脳は会談後のプレス会見で会談を「成功かつ有益」(プーチン大統領)、「開かれた生産的な対話」(トランプ大統領)と総括した。

経済分野では、ロシアからドイツにバルト海経由で天然ガスを輸送するパイプライン「ノード・ストリーム2」建設について議論が行われ、トランプ大統領は米国産天然ガスの欧州向け輸出を積極的に増加させる方針を示した。トランプ大統領は7月11日にベルギーのブリュッセルで開催されたNATO首脳会議で、現在建設中の天然ガスパイプライン「ノード・ストリーム2」を推進するドイツを批判したことについて、「米国は現在でも世界最大の石油・天然ガスの産出国で、われわれは液化天然ガス(LNG)を輸出している。(LNGを欧州へ輸出する際にはロシアからの)パイプラインと競争しなければならない。パイプラインには有利な点もあるが、われわれはうまく競争するだろう。アンゲラ・メルケル・ドイツ首相とこの点を厳しいトーンで議論した」と発言し、批判の背景にはドイツを含む欧州各国への米国産LNGの輸出を増加させたい意向があることを示唆した。同大統領は「米国は(LNGの輸出を制限していた)数年前とは全く別の国だ。われわれは産出できるだけ(の天然ガスを)産出する。われわれは強い競争相手となる」とも述べ、LNG輸出の増加に強い意欲を示した。

プーチン大統領はトランプ大統領の発言に対して、「(トランプ)大統領のスタンスはわれわれにとって明確になった」と述べつつ、「両国は(天然ガスの)生産者を苦しめる極端な価格下落や、加工・機械産業、その他経済分野に打撃を与える極端な価格上昇には関心がない」とし、「原油・天然ガスの国際価格の調整について両国で建設的な協力の余地がある」とした。また、ノード・ストリーム2建設へのトランプ大統領の批判について、プーチン大統領は「(トランプ)大統領はウクライナ経由の天然ガスのトランジット輸送がなくなることを懸念している」と述べ、「ロシアは2019年に終了するウクライナとのトランジット契約を延長する用意がある」として、ノード・ストリーム2事業推進のため、米国とウクライナ(注)に配慮する姿勢をみせた。

このほか、両首脳は経済面で、両国間の貿易投資促進のためハイレベルのワーキンググループを発足させることで合意した。

(注)ウクライナのポロシェンコ大統領は、NATO首脳会議の枠内でトランプ大統領と面会し、同国のノード・ストリーム2事業への立場を伝えている。

(高橋淳)

(ロシア、米国)

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