グループPSA、イラン事業撤退に着手

(フランス)

パリ発

2018年06月11日

グループPSAは6月4日、8月6日に発動される米国による対イラン制裁措置に対応するため、イラン事業の撤退に向けた手続きを開始したと発表した。グループPSAは2015年のイラン核合意を受け、2016年の6月にイラン国営自動車メーカーであるイランホドロと、10月には同業のサイパと合弁会社を設立し、2017年に現地生産を開始していた。生産停止には時間を要するため、「フランス政府の支援の下、米国政府と特別措置の適用を視野に協議を行っている」ことを明らかにした。

PSAは2017年にイラン国内で44万4,600台を販売し、グループの世界販売台数の拡大(363万2,300台、前年比15.4%増)に貢献していた。イラン事業撤退の影響についてPSAグループは、「イランはグループ売上高の1%に満たないことから、(2016年に発表した)中期経営戦略の目標を修正するに至らない」とした。

フランス最大の経営者団体MEDEFのピエール・ガタズ会長はメディアのインタビューで「米国の圧力の下、イラン撤退を決めたグループPSA決定は正しいか」との問いに対し、「PSAには撤退という選択肢しかない。米国に従わないと罰金を伴う制裁、米国市場やドル取引から締め出される恐れがある」とPSAの決定を擁護する一方で、「EUは米国の対イラン制裁再開について政治的解決策を探るべき」とした。

フランス大手企業の中でイラン事業からの撤退を決めたのは、石油のトタルに続き2例目となる。トタルは5月16日、米国による制裁措置の適用から除外されない限り、イランにおける天然ガス田の開発プロジェクトから撤退する方針を発表していた。トタルのパトリック・プヤネ会長は6月1日、「米国の戦略は、イランを完全封鎖するため最高レベルの制裁措置を導入することだ。われわれは米国政府から適用除外を受けるためにフランス政府に支援を求めたが、現実を直視しなければならない」と述べ、イラン事業を継続する可能性はほぼないとの認識を示している。

(山崎あき)

(フランス)

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