EUが声明、外交こそが恒久的和平への唯一の手段-「米朝首脳会談」に対する見方-

(EU、米国、北朝鮮)

ブリュッセル発

2018年06月14日

EUのフェデリカ・モゲリーニ外務・安全保障政策上級代表(欧州委員会副委員長兼任)は6月12日、シンガポールで開催された米朝首脳会談について、「外交こそが朝鮮半島の恒久的和平に向けた唯一の手段であるとのわれわれの強い確信を再認識させるものだ」との声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。

有識者は欧州が北朝鮮ビジネスで後れを取るリスクを指摘

EUはこれまでも、国連安全保障理事会決議を重視する立場から「朝鮮半島の完全で、検証可能、かつ不可逆的な非核化」を目標として求めてきたが、モゲリーニ外務・安全保障上級代表は「(今回の)米国大統領と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の指導者の間の首脳会談は、朝鮮半島の永続的な平和には外交という道しかないとのわれわれの強い確信を再確認させるものだった」との見解を明らかにした。

また、欧州議会で第2位の議席を占める社会・民主主義進歩連盟グループ(S&D)のビクトル・ボシュティナル副代表(外交問題担当、ルーマニア選出)は同日、米国のイラン核合意からの離脱(2018年5月10日記事参照)を批判しつつ、米国が北朝鮮と交渉を進める核合意について「イラン核合意と同水準の野心的な内容にすることを望む」とコメントを発表した。

他方、ブリュッセル自由大学・欧州研究所(IES)で朝鮮半島情勢研究グループの代表を務めるラモン・パチェーコ・パルド博士(国際関係)は6月13日、「(世界の)産業・企業は既に北朝鮮の経済再生にいかに食い込み、利益を上げるかに注目している。このままでは欧州はこのビジネスチャンスから締め出されることになる」とツイッターに投稿した。同博士は「北朝鮮政府は同国の経済改革が外国投資と技術移転によってのみ実現可能と気付いており、その両方を求めている」と指摘する。北朝鮮・平壌(ピョンヤン)に置かれているEU加盟国の大使館(2017年9月11日記事参照)や欧州企業の韓国・ソウル支社・支店から本国に対して、この「北朝鮮の変化」について報告されているとして、同博士は、北朝鮮が今後、中国やベトナムのような経済改革を進める可能性が高いと示唆する。

このため、EUが北朝鮮に対する経済制裁を続けた場合、北朝鮮に先行投資している韓国をはじめとする他国に欧州企業は後塵(こうじん)を拝することになる、と同博士は警鐘を鳴らしている。

(前田篤穂)

(EU、米国、北朝鮮)

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