メイ首相、G7で米国の関税政策に失望を表明

(英国、米国)

ロンドン発

2018年06月12日

テレーザ・メイ首相は6月11日に下院で、9日に閉幕したG7首脳会議の結果を報告した。メイ首相は冒頭、「激しい論争と幾つかの事案に関する見解の相違」があったことを認めつつ、「各首脳や英政府代表団による徹底した議論の結果、共通点を見いだし、合意を反映した共同宣言を策定できた」と、成果を強調した。

一方、米国がEUなどからの鉄鋼・アルミニウム輸入に対する追加関税を6月1日から発動したことについて、メイ首相は「正当化できない決定であり、われわれは深い失望を表明した」と述べた。さらに「関税による貿易の減少は競争力を弱め、生産性を押し下げ、技術革新への動機付けを損ない、結果として全員が貧しくなる。これに対処するため、EUは対抗措置を取ることになる」と付け加え、首脳会議閉幕後の記者会見で述べた発言を繰り返した。メイ首相は、サミットに先立って6月4日に行われた米国トランプ大統領との電話会議でも、強い失望を表明している。

米国とEUの建設的対話を支持

他方でメイ首相は、「報復合戦の過熱化は避けるべき」との考えも示し、米国とEUの建設的な対話を支持する意向を表明した。メイ首相は首脳会議開幕前にも記者団に対し、対抗措置はWTOのルールにのって行われるべきだと述べ、EU主要国に自制を促していた。他の外交案件でも英国が大陸欧州と一線を画して米国寄りに立つことはあるが、今回もEU主要国と立場は同じくしつつ穏健な解決を志向している節もある。EU離脱後、米国などと個別に自由貿易協定の交渉を行う必要が生じる可能性が高い事情もあるようだ。

しかし、米国の追加関税やイラン核合意に関する一方的措置に対して、英国はこれまで影響力を発揮できていない。今回の首脳会議でも、メイ首相は米国以外の5カ国首脳と個別に会談したが、トランプ大統領との会談は実現しなかった。

7月にはトランプ大統領の訪英が予定されている。ドイツやフランスの首脳などに比べ影響力の低下が指摘されるメイ首相が、その機会を利用して存在感を発揮できるか問われそうだ。

(宮崎拓)

(英国、米国)

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