南部天然ガス輸送路のアゼルバイジャン~トルコ間が開通

(トルコ、アゼルバイジャン、ロシア、トルクメニスタン、EU)

欧州ロシアCIS課

2018年06月14日

アゼルバイジャンの天然ガスをトルコまで輸送するパイプライン「TANAP(トランスアナトリア・パイプライン)」の開通式典が6月12日、トルコ北西部のエスキシェヒルで開催された。TANAPは、アゼルバイジャンのシャフ・デニズ・ガス田からジョージア、トルコ、ギリシアなどを経由しイタリアに至る「南部天然ガス輸送路」の主要部分。シャフ・デニズ・ガス田からジョージア・トルコ国境までの区間(970キロ)は2018年5月29日に開通済みで、今回アナトリア半島を横切ってトルコ・ギリシャ国境に至る区間(1,850キロ)の一部(1,300キロ)が開通した。

トルコ・ギリシャ国境からアドリア海を経由してイタリアに至る区間(トランスアドリア・パイプライン:TAP、878キロ)は2020年に完工の予定。商業出荷は当初計画どおりの6月30日(2018年2月21日記事参照)からとなっている。

式典にはトルコのエルドアン大統領のほか、アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領、ウクライナのぺトロ・ポロシェンコ大統領らが出席した。アリエフ大統領は「(TANAP建設は)トルコ・アゼルバイジャン両国にとって最初の事業ではない」と述べ、過去のパイプラインや鉄道事業を挙げて両国の友好関係を強調した。南部天然ガス輸送路事業がトルコや欧州のエネルギー安全保障に貢献すると述べた。また、ポロシェンコ大統領は「(ロシア産天然ガスでないパイプライン)TANAPはウクライナの安全保障にも重要」と述べ、トルコからブルガリア、ルーマニア経由の天然ガスの将来的な調達に意欲を示した。

トルコ政府によると、今回の開通式にはトルクメニスタンのグルバングルィ・ベルディムハメドフ大統領も招待されていたが、同大統領は出席を見送った。EUは2020年の南部天然ガス輸送路の全線開通後に同国産天然ガスの輸入に意欲的で、6月12日には欧州委員会、ジョージア政府、トルクメニスタン政府の3者がカスピ海海底を通る天然ガスパイプライン事業の採算性調査の経費負担について合意に至った、と報じられている。

今回のTANAP開通についてロシアのメディアは、現在、EUの天然ガス年間需要量の5,482億立方メートルのうち1,944億立方メートル(35.4%)をロシアが供給する一方、(TANAPを経由する)シャフ・デニズ・ガス田産の欧州向け天然ガスは年間100億立方メートルで量的に少ないことや、2019年末に完成予定のトルコストリーム第2幹線(欧州向け)のロシア産天然ガス輸送能力は157億立方メートルあり、TANAPが輸送能力を強化してトルクメニスタン、イラン、イラク産天然ガスなどを供給しない限り、価格形成に影響する競争環境にはならないだろう、と予想している。

(高橋淳)

(トルコ、アゼルバイジャン、ロシア、トルクメニスタン、EU)

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