欧州産業界はEUの対米対抗措置を支持

(EU、米国)

ブリュッセル発

2018年06月01日

EU原産の鉄鋼・アルミニウムに対する米国の追加関税賦課決定について、欧州産業界からは批判が相次いでいる。欧州鉄鋼連盟(EUROFER)は5月31日、対米鉄鋼輸出に対して6月1日から25%の追加関税が課されることを非難し、欧州委員会に広範な製品を対象とするセーブガード措置を迅速に発動することを求める声明を発表した。同連盟のアクセル・エガート会長は「米国の措置は露骨な保護主義だ。世界の通商システムにとって悪い日になった」とコメント、「不必要に被害をもたらす対応だ」と批判した。

米国市場を失った余剰品の流入を警戒

また、同連盟は米国の追加関税措置を避けた世界(第三国)の余剰鉄鋼が欧州に流入する事態を「232条効果」と呼び、自らの権益を守るためにEUとしての迅速な対応を求めた。具体的には、EUとしてのセーフガード措置について、(1)影響を受ける全ての鉄鋼製品を対象とすること、(2)特定国に対する適用除外は認めないことを想定しているという。

欧州アルミニウム協会(EAA)も同日、EU原産のアルミニウムの対米輸出に10%の追加関税賦課が始まることについて「不当」とする声明を出した。同協会は「EUのアルミニウム輸出が米国の安全保障上の脅威とする前提は認められない。不当な措置にはWTOでの紛争解決手続きを含めてEUとして対抗することを求める」としている。同協会のゲルト・ゲッツ会長は「(第三国からの余剰品の流入は)欧州の生産者に不公正な競争をもたらし、特に中小企業には打撃だ」とコメントした。

また、欧州の経団連に相当するビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)も同日、「世界経済に悪いニュース」と題する声明を発表した。マルクス・バイラー事務総長は「欧州と米国は同じ課題に直面している。相互に不当な『課税合戦』を演じるのではなく、価値観を共有するパートナーとして手を携えるべきだ」とし、今後の対応について、「EUとしてはWTOで認められた範囲で、適切な対抗措置を講ずることになる」と語った。

(前田篤穂)

(EU、米国)

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