ヤンシャ前首相率いる民主党が第1党に、組閣は難航か

(スロベニア)

ウィーン発

2018年06月11日

6月3日に行われた議会選挙(定数90)で、ヤネス・ヤンシャ前首相が率いる中道右派のスロベニア民主党(SDS)が25議席を獲得して第1党、新党「リスト・マリャン・シャーレツ」(LMS)が13議席で第2党になった。ミラン・ツェラル首相率いる現代中央党(SMC)は10議席にとどまり大きく後退した一方、SMCと連立を組む社会民主党(SD)は得票数を増やして10議席になった。ほかにも5つの小政党が議席を獲得したため、新議会は過去最多の9つの政党と少数民族の代表2人から構成されることになり、組閣が困難になる見通しだ。投票率は52%で、前回より低かった。

スロベニア経済が好調な中、今回の選挙戦の主な争点は移民問題と隣国クロアチアとの境界線論争だった。SDSのヤンシャ党首は移民問題に焦点を当て、移民に対して強硬策をとるハンガリーのオルバン首相と連携するなどして大々的に取り上げたことがSDSの勝因の1つといえる。現職のツェラル首相に対して大きな批判はなかったが、2014年に新党として36議席を獲得した際の目新しさは既になく、議席を減らした。

一方、元コメディアンのマリャン・シャーレツ氏が率いる新党LMSが躍進した。ウィーン比較経済研究所のスロベニア専門家であるヘルミーネ・ビドビッチ氏は、新党の支持率の高さや政党数の多さ、投票率の低さは国民の政治不信を表し、政治への期待を失った有権者は抗議の意味で新党への票か棄権した、と分析する。

勝利したSDSの党首兼首相候補であるヤンシャ氏は、2004年から4年間、2012年から1年間、首相を務めたが、2014~2015年には汚職の実刑判決のために収監された。2015年に憲法裁判所が有罪判決を覆した後、同氏は政界に復帰したが、有権者の間では同氏に対する不信感は払拭(ふっしょく)されておらず、SDSの右傾化も問題視されている。新スロベニア・イニシアチブ(NSi、7議席)と極右とされるスロベニア国民党(4議席)以外は、SDS主導の連立政権に参加しない旨を表明した。

ボルト・パホル大統領は組閣をヤンシャ氏に委ねる意思を示したが、失敗した場合には、第2党のシャーレツ党首が5~6党から成る中道左派の連立政権を組む可能性が高い。いずれにせよ、新政権の発足は早くて秋になる見通しだ。

(エッカート・デアシュミット)

(スロベニア)

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