自動車関連団体、追加関税の影響の試算を相次いで発表

(米国)

ニューヨーク発

2018年06月29日

自動車に関係する調査会社やシンクタンクなどは、1962年通商拡大法232条に基づく米商務省の自動車と同部品輸入に対する安全保障調査(2018年5月25日記事参照)について、25%の追加関税が課せられた場合の影響に関し、試算結果を発表した。

市場調査会社のLMCオートモーティブ(以下、LMC)は6月22日、新車販売台数の約半数に当たる820万台が輸入関税の対象となることを独自に調査した上で、追加関税によって増加するコスト全てを販売価格に転嫁させた場合、年間販売台数は200万台、半分を転嫁した場合は91万7,000台減少するとの試算を発表した(注1)。購入の先延ばしや中古車への切り替えが背景にあるとみている。また販売価格に関して、米国自動車工業会(AAM、注2)は1台当たり平均5,800ドル、全米自動車ディーラー協会(NADA)は6,000ドル以上、上昇すると試算した(6月27日)(注3)。

LMCは、全販売台数のうち国内生産の割合が8割を占めるピックアップトラックへの影響は限定的なものの、5割に満たないスポーツ用多目的車(SUV)は比較的大きいと指摘した。一方、NADAは、全米販売台数首位のフォードのピックアップトラック「F150」の部品のうち約35%が輸入品であることを例に挙げ、サプライチェーンがグローバル化する中で、米国産であってもコスト上昇の影響は免れないと強調した。

PIIEは約20万人の雇用に影響と分析

ピーターソン国際経済研究所(PIIE)は5月31日、25%の追加輸入関税が賦課された場合、国内生産台数は1.5%減少し、19万5,000人の雇用が1~3年間かそれ以上の期間失われるとの見方を示した。さらに、米国が輸入相手国の全てから同種の報復を受けた場合、62万4,000人の雇用が失われるとも試算している。加えて、課税によるコスト増を避けるため生産拠点を米国内に移管した場合、メーカーは新たなサプライチェーンの構築や、不透明な通商政策の下での投資判断などがコスト要因になると指摘した。

(注1)米国の2017年の新車販売台数は1,723万台。LMCは2018年の新車販売台数を1,710万台と予測している。

(注2)メンバーはビッグスリーやトヨタを含む自動車メーカー12社。

(注3)自動車情報サイトのトゥルーカー・ドット・コムの調べによると、米国の2017年の1台当たりの平均販売価格は3万3,182ドル。

(大原典子)

(米国)

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