ピニェラ大統領が教書演説、家族は社会の核と強調

(チリ)

サンティアゴ発

2018年06月11日

ピニェラ大統領は6月1日、バルパライソにある国会で2時間17分に及ぶ教書演説を行い、家族、教育、公共事業などの分野での改革を発表した。

大統領が最も強調したのは、社会開発省に代わる「家族社会開発省」を設置する法案で、「目的は家族の豊かさと多様性を社会の不可欠な核として認識し、強化することだと述べた。新たな省は、ライフサイクルのさまざまな段階で家族に寄り添い、依然として何百万人もの国民が直面している貧困と脆弱(ぜいじゃく)性の問題を支援するとしている。

教育分野では高等教育における新たな奨学金制度が導入される。この制度は年2%の利率で国が管理する。学生は在学中に返済義務はなく、卒業後の返済額も賃金の10%を超えることはない。収入のない場合は返済が免除される。卒業し所得がある者に返済義務が課され、15年支払ったのち残りについては免除となる。

公共事業ではサンティアゴの地下鉄3号線を31キロ延伸し、18駅を新設、新たに3つの地域が地下鉄に接続可能となる。さらに2026年ごろをめどに7号線、8号線、9号線の新設と4号線を57キロ延伸する計画も発表した。これは現在の地下鉄を約50%拡張することになり、首都の人口の半数が自宅から徒歩で地下鉄の駅にアクセスできるようになる。

大統領はまた、自営業や中小企業労働者の年金や社会保障制度の近代化、服役囚の社会復帰のための更生プログラムの設置、少年犯罪に関する刑法の改正、女性や高齢者に対する健康保険制度の平等化、年金制度改革、新養子縁組法の制定、税制の簡素化などを発表した。なお、大統領選の公約に掲げていた法人税率の引き下げに関しては、社会改革やプロジェクトの緊急性、財政難などを理由に税率を据え置く方針を明らかにした。

(岡戸美澪)

(チリ)

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