カナダ政府がパイプライン拡張計画の買い取りを発表

(カナダ)

トロント発

2018年06月01日

カナダ政府は5月29日、キンダー・モルガン(本社:米国ヒューストン)のトランスマウンテン・パイプライン(TMPL)拡張計画を45億カナダ・ドル(約3,780億円、Cドル、1Cドル=約84円)で買い取ることに合意したと発表した。取引は8月に完了することを予定している。

プロジェクト再開に向け前進

ウィリアム・モルノー財務相は「TMPL拡張計画により、先住民地域を含む何千もの良質な中間層雇用を創出することになる」との声明を発表した。キンダー・モルガンのカナダ子会社キンダー・モルガン・カナダ(KMC)は、4月8日にTMPL拡張計画の一時凍結を発表し、5月31日までに利害関係者との協議に合意したいとの意向を発表していた(2018年4月16日記事参照)。

今回発表された買い取り価格には、パイプラインに関連するターミナルの資産も含まれるが、建設にかかる労働コストや資材費は含まれていないため、最終的な購入価格はより高くなると予想されている。

モルノー財務相は「政府はこのプロジェクトの長期所有者となる意向はなく、適切なタイミングで投資家とプロジェクトおよび関連資産の譲渡について協議していく」との見解を述べた。政府は、TMPL拡張計画の購入者が政治的な動機で不必要な遅延に直面した場合、被った財務上の損失に対して補償を行うとしている。また、政府はキンダー・モーガンとTMPL拡張計画を速やかに再開することに合意し、今夏に遅滞なく建設工事を再開できるように、政府系金融機関からの融資保証を通じて資金面で支援する。

キンダー・モーガンのスティーブ・キーン社長兼CEO(最高経営責任者)は、「われわれは株主のために公正な価格で売却することに合意し、カナダの国益に資するプロジェクトを前進させる方法を見つけることができた」とのコメントを述べた(「グローブ・アンド・メール」紙5月29日)。TMPLを支持するアルバータ州のレイチェル・ノトリー首相は「われわれは、連邦政府と協力してTMPL建設工事の再開を確実にしたことをうれしく思う。アルバータ州民と全てのカナダ国民は、プロジェクトの前進により大きな利益を享受する」との声明を発表した。

一方、プロジェクトに反対するブリティシュ・コロンビア(BC)州のジョン・ホーガン首相は「本日の発表は、オイルタンカーの交通量が7倍に増加するリスクを変えるものではなく、希釈ビチューメンが漏出した場合、BC州の経済や環境に甚大な影響を与えるだろう。われわれは法令と法廷でBC州の利益を守ることを決意している」と述べた。

(伊藤敏一)

(カナダ)

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