外務・安全保障上級代表、核合意めぐる複雑さ認める

(EU、イラン)

ブリュッセル発

2018年05月29日

EU外相理事会がブリュッセルで5月28日に開催され、欧州委員会のフェデリカ・モゲリーニ外務・安全保障政策上級代表(欧州委員会副委員長兼務)は閉会後の記者会見で、「イラン核合意堅持」の方針や「EUとしての一体性」をあらためて強調した。しかし、記者からはこうした現状認識を疑問視する質問が出て、同代表は苦しい答弁に追われた。

EU加盟国にも米国へ同調の動き

モゲリーニ外務・安全保障上級代表は、今回のEU外相理事会を「5月17日までブルガリア・ソフィアで開催されたEU非公式首脳会議のフォローアップ会合と位置付けている」と語り、イラン核合意をめぐる問題解決に向けた具体的な展望について明言しなかった。このため、記者から「EU各国外相から具体的な提案はあったのか」「どのようなスケジュール感で問題に対応するのか」などの質問が出た。

これに対して、同代表は「今回のEU外相理事会の成果の1つが、EUと加盟国の連携強化を図るためのネットワーク立ち上げを決定したことだ」と語った。EUとEU加盟国の措置を連携させ、それらを担う各国担当者のネットワーク立ち上げを目指すという。

他方、今後のスケジュールについては「欧州の投資家は事態の安定を求めており、迅速な対応が必要」と述べたものの、同時に事態の複雑さも認め、「今後数週間」で問題の解決に向けて前進を図るほかないと語った。

しかし、記者からの「イラン核合意から離脱した米国の姿勢に理解を示すポーランドのような事例もあり、『EUとしての一体性』には疑問がある」との指摘に対して、モゲリーニ代表は「(EU加盟国各国は)米国の懸念の幾つかを共有しているという点では一体だ」と苦しい答弁で応じ、EU加盟国にも米国の姿勢に同調する動きがあることを否定しなかった。また、イランが核兵器を開発するリスクに対する懸念をEUとして認識していることにも言及したが、それ故にイラン核合意の適切な履行をイランに求める必要がある、との従来の主張を繰り返すにとどまった。

(前田篤穂)

(EU、イラン)

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