JCPOAへの関与継続を表明

(ドイツ、イラン、米国)

ベルリン発

2018年05月14日

ドイツ連邦首相府は5月9日、米国のイラン核開発に関する「共同包括行動計画(JCPOA)」離脱問題に関し、英国とフランスとともに声明を発表、「ドイツ、フランスと英国の首脳は、JCPOAから離脱するというトランプ米大統領の決定を遺憾に思う。われわれは共に今後も合意の履行を継続することを強調する。この決議は依然としてイランの核計画に関する紛争解決のための、拘束力のある国際法的枠組みだ。われわれは、全面的に、決議の完全な履行を順守することを要請し、全ての関係者に対して責任を持って行動するよう求める」と述べた(2018年5月11日記事参照)。

また、アンゲラ・メルケル首相は5月11日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と電話会議を行い、米国以外のJCPOA署名国間で合意を得ることと中東地域でのさらなる不安定化の加速を避けることの重要性を確認した。

ハイコ・マース外相は、「核合意により安全がもたらされていた場所に、危険が生まれる恐れがある上、国際協定の信頼性を欠くことにもなる」と述べた。イランに対しては、慎重な振る舞いと核合意への関与を今後も継続していくよう呼び掛けている。核合意の維持は中近東諸国だけではなく、核兵器の広がりを阻止する世界的な関心となっているとドイツ外務省は発表している。5月11日の報道によると、マース外相も、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相とも協議を行った。

企業への影響も懸念されている。在ドイツ米国大使館が「大統領は、JCPOAに関連し、直ちに経済制裁再開をするよう命じた。イランの事業者は、取引停止に向け、期間が設けられる」とツイートしたのに対して、ドイツ産業連盟のディーター・ケンプ会長は、「イランでドイツ事業者が直ちに撤退を求められることは理解できず、このような米国の振る舞いは制裁の違法な国際適用だ」とツイッターで批判した。

ドイツ商工会議所連合会のエリック・シュバイツァー会頭は、「イランへの制裁を復活させるというトランプ米大統領の決断により、イランとのビジネスに関わる多くのドイツ企業は、深刻な不安を抱えることになる。2016年初めの経済制裁の解除以降、多くの新しいビジネス関係が生まれた。ドイツからイランへの輸出は2017年、16%の増加を遂げている。米国政府の一方的な行動により、これらの事業が追い詰められることになる」と述べ、ドイツ企業の活動への影響を強く懸念している。

(是永基樹、油井原詩菜子)

(ドイツ、イラン、米国)

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