食品小売り大手2社、拡大路線継続も収益率で伸び悩む
(ロシア)
欧州ロシアCIS課
2018年05月15日
小売り最大手でチェーン店「ペチョロチカ」や「ペレクリョストク」「カルセリ」を束ねるX5リテール・グループは4月26日、2018年第1四半期の財務諸表を発表した。グループ全体の売り上げは前年同期比19.9%増の3,515億1,800万ルーブル(約6,327億円、1ルーブル=約1.8円)となったが、純利益は32.6%減の56億2,800万ルーブルとなり、2014年の経済の落ち込み以降最大の減益率となった。利払い・税引き・減価償却前の利益(EBITDA)や収益率は過去3年間で7%台を維持してきたが、今期は6.1%とマイナスに転じた。
スベトラーナ・デミャシュケビチ最高財務責任者(CFO)は投資家との電話会議で、今期の決算結果について「(減益は想定内であり)前年までの収益率が異常に高かった」と説明。食品分野での物価の伸び悩みや、2月の寒波で消費者が自宅近くの小規模商店で買い物することを選んだことなども、小売業界全体に悪影響が与えたとしている。同じく業界大手の「マグニト」の2018年第1四半期は、売り上げが前年同期比8.1%増の2,885億6,137万ルーブルとなったが、収益率は0.8ポイント減の7.1%となっている。
コンサルティング会社のオリバー・ワイマンは、小売業界の収益率が落ち込んでいる構造的な問題として、過剰な出店競争と顧客サービスの悪化が原因と分析している。業界最大手のX5グループとマグニトは2018年にそれぞれ2,500店舗、2,200店舗の新規店舗を予定するが、地方に行くほど物流を含めた操業費用は高くなり、「拡大のための拡大」で顧客サービスの質は低下する結果、リピート率と1回の購買額も下がり利益率は低くなると指摘している(「RBK」紙電子版4月25日)。
今回の業績発表を受け、市場ではX5グループの海外株式預託証書(GDR)価格が下落。モスクワ証券市場の4月26日終値はマイナス3.3%の1,740ルーブル、ロンドン証券取引所でも一時マイナス8.3%の26.5ドルと、2016年末以来の安値圏で推移した。
(高橋淳、市谷恵子)
(ロシア)
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