欧州議会、対内直接投資の審査厳格化法案を委員会可決

(EU)

ブリュッセル発

2018年05月29日

欧州議会は5月28日、EU域内における外国直接投資に対する審査(スクリーニング)を厳格化する法案を国際貿易委員会(INTA)において可決したと発表した。EU加盟国の戦略的権益保護の観点で、特にインフラ、先端技術などの分野における外国投資を厳格に審査できるように欧州委員会の権限を強化する。同法案は6月11~14日にストラスブールで開催予定の本会議で可決された上で、EU理事会で審議される。

欧州委とEU加盟国との連携強化を目指す

今回の法案は欧州委が2017年9月13日に提案した「貿易・投資パッケージ」が原点となっている(2017年10月17日記事参照)。欧州議会によれば、外国直接投資はEU経済の成長を支える重要な要素となってきたが、「国営企業による投資」「エネルギーや情報通信など重要インフラ分野への投資」「ロボティクスや原子力など基幹技術への投資」などについては留意すべきとしている。

EU加盟国には、安全保障や公的秩序の観点から独自の投資審査システムを導入している国もあるが、システムの運用には幅があり、EU域内の複数国にまたがる投資については統一基準で審査できていない。欧州議会は今回の法案は審査システムを統一するものではなく、欧州委とEU加盟国との連携強化を図るものだとしている。

具体的には、EU加盟国が投資案件の審査をすることを決定した場合、5営業日以内にその旨を欧州委とその他のEU加盟国に通告し、意見調整を行うほか、投資審査システムをめぐるベストプラクティス(優れた運用事例)や生じ得る懸念の共有などについて、欧州委主導の調整グループを立ち上げることで、連携強化を目指すなどの方針が盛り込まれている。

(前田篤穂)

(EU)

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