サムスン電子、世界5極でAIを研究開発

(韓国、英国、カナダ、ロシア)

中国北アジア課

2018年05月28日

サムスン電子は5月22日、英国(ケンブリッジ、5月22日)、カナダ(トロント、5月24日)、ロシア(モスクワ、5月29日)で人工知能(AI)研究センターを設立すると発表した。これにより、韓国AI総括センター(ソウル、2017年11月設立)、米国(シリコンバレー、2018年1月設立)と合わせ、5カ国にAI研究センターを有することになる。

さらに同社は、AI関連の研究開発力強化のため、2020年までに1,000人(韓国600人程度、海外400人程度)以上の研究開発人材を確保していく計画を明らかにした。

今回の発表について、韓国の主要メディアでは、サムスングループの事実上のトップの李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長の釈放後の大きな動きである点、と「ポスト半導体」事業の方向性を示している点に注目している。

成長戦略構築に向け動き出す

李副会長は、朴槿恵(パク・クネ)前大統領への贈賄の容疑などで、一審で実刑判決を受けたものの、2018年2月の二審では執行猶予付きの有罪判決を受け、釈放されていた。李副会長収監中はグループの重要な意思決定が事実上、止まっており、ようやく、将来の成長戦略構築に向け動き出したことになる。一方、サムスン電子の業績は現在、絶好調だが、2017年は営業利益の3分の2を半導体に依存している(表参照)。スマートフォンは伸び悩みが鮮明で、ディスプレーや家電の利益貢献は限定的なため、今後、半導体事業の収益が揺らいだ場合、それに代わる事業が見当たらない。

同社の発表に関して、「聯合ニュース」(5月22日)は「李副会長が半導体とテレビ、スマホをつなぐ新しいサムスンの『主力エンジン』として(中略)『AI』を選んだ」と総括、「韓国経済新聞」(5月22日電子版)は、「サムスンの内外では、今後、AIに関連したM&Aが相次ぐとの見方も出ている」と報じた。ただし、「聯合ニュース」(同日)が「一部では、(中略)サムスン電子のスタートが既に遅く、世界の競合他社に伍していくのは容易ではないとの懸念も浮上している」と報じるなど、慎重な見方も出ている。

表 サムスン電子の部門別営業利益の推移

(百本和弘)

(韓国、英国、カナダ、ロシア)

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