制裁順守行為への罰則法案が下院に提出、実業界は反対姿勢

(ロシア)

欧州ロシアCIS課、モスクワ発

2018年05月17日

ビャチェスラフ・ボロジン下院議長、ワレンチナ・マトビエンコ上院議長、下院副議長4人、主要政党党首4人など超党派の国会議員10人は5月14日、米国などが発動した対ロシア制裁を順守する行為に罰則を科す法案を下院に提出した。

提出されたのは法案第464757-7号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます「ロシア連邦刑法典の修正の導入について」。刑法典第29章「憲法秩序と国家安全保障の根幹に対する犯罪」(第275~第284条)に第284条の2を追加。「外国政府、諸外国政府の連合または国際機関により導入された制限措置(以下、制限措置)実施への協力を目的に、通常の業務活動または取引(注)の拒否または制限につながる行為」に対する罰則導入を内容とする。

第284条の2の第1項は、ロシア国民・法人、連邦政府・連邦構成体・市町村とその支配下の主体への上記行為(不作為を含む)に対して、60万ルーブル(約120万円、1ルーブル=約2円)以下もしくは給与額・その他収入4年分以下の罰金、もしくは4年以下の懲役・禁錮など(場合により20万ルーブルもしくは給与・その他収入1年分以下の罰金刑の追加)を科す内容。

第2項はロシアの民間・公的主体・その支配下の主体に対する制限措置を可能にするロシア国民の故意の行動(助言・情報提供活動を含む)に対し、50万ルーブル以下もしくは給与・その他収入の3年分以下の罰金、3年以下の禁錮・懲役、6カ月以下の拘留(場合により20万ルーブルもしくは給与・その他収入1年分以下の罰金刑の追加)の罰則導入を記載している。

投資環境を著しく悪化させるなどと指摘

5月17日時点で法案は下院の第1読会を通過し、第2読会で審議中。有力経営者団体のロシア産業企業家連盟(RSPP)は5月16日、幹部会合を実施しコメントを発表。審議中の法案は過度なもので、ロシアで活動する外国人は外国・ロシア政府との間で板ばさみになること、ロシア企業の国外での活動に支障が生じること、ロシアの投資環境を著しく悪化させる点などを指摘。実業界として本法案に反対する姿勢を明確にしている。

(注)法律・契約義務の遂行に関する法的行為を指す。引き受け義務がある契約行為、過去締結した契約義務の履行、取引者により扱いが変わらない行為(銀行口座開設、支払い行為、有価証券の売買など)などが想定されている。

(高橋淳、齋藤寛)

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