鉄鋼業界は企業規模で異なる反応-301条公聴会-

(米国)

ニューヨーク発

2018年05月24日

米通商代表部(USTR)は5月15~17日の3日間、1974年通商法301条(以下、301条)に基づく対中関税賦課に関する公聴会を開催した。

鉄鋼業界は、企業・団体ごとに対中関税賦課に対する姿勢が分かれた。規模の大きい鉄鋼メーカーは賦課を支持する傾向がみられ、多くの鉄鋼関連製品を追加対象とするよう求めた(注)。また、中国の不公正な貿易慣行、知的財産権侵害、政府の不正な補助金により廉価な中国製品が流入し甚大な被害を受けていると訴えた。

大手のUSスチールは、中国からサイバー攻撃を受けた事例を挙げ、中国の知財侵害は米国の鉄鋼産業全体にも大きな被害を与えたと述べ、断固たる措置が必要と主張した。他方、中国産の鉄鋼関連製品を原料として輸入する小・中規模メーカーの多くは反対の姿勢を示し、自社が輸入する製品を対象から除外するよう求めた。

繊維・アパレル製品をめぐっては、小売業界と繊維業界で異なる見解が示された。ギャップやアメリカン・イーグル・アウトフィッターズなどの主要ファッションブランドが多く加盟する米国アパレル・履物協会(AAFA)は、繊維・アパレル製品を対中関税賦課の対象外とするよう求めた。一方で、繊維製造業者が多く加盟する全米繊維団体協議会(NCTO)は、繊維・アパレル製品を対象に含めることを求めた。

製造業界は2国間貿易協定を求める

全米製造業者協会(NAM)は、対中関税賦課は中国の不公正な貿易慣習の是正には効果がなく、反対に米国経済にとって有害との見方を示し、特に中小企業に与える影響が大きいとして批判し、中国に対抗するためには包括的かつ戦略的なアプローチで、現代的で革新的な2国間貿易協定を締結することが必要との見解を述べた。

一方、中国の経済団体からは、301条に基づく関税賦課は米国の国内法およびWTOの国際的なルールと矛盾し、世界のサプライチェーンを破壊するものだと批判の声が出た。また、関税賦課ではUSTRが挙げる中国の貿易習慣、技術移転、知財保護の問題は解決できず、301条に直接関係しない業種の米国企業も被害を受けるとした。

なお、公聴会にはUSTR、商務省、国務省、財務省、労働省、税関・国境警備局、米国中小企業協会の職員が委員として参加した。

(注)USTRはトランプ大統領の指示に基づき、中国からの輸入に25%の関税を賦課する約1,300品目(500億ドル相当)のリストを4月3日に公表している(2018年4月6日記事参照)。

(須貝智也)

(米国)

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