メイ首相、離脱後のEUとの関係に関する白書を6月公表

(英国)

ロンドン発

2018年05月18日

6月下旬に開催される欧州理事会(EU首脳会議)に先立ち、英国のテレーザ・メイ首相がEU離脱(ブレグジット)に関する白書を公表する意向を明らかにしたと5月15日、当地メディアが一斉に報じた。

白書は、EU離脱後の英国とEUの関係の在り方を示すもので、4月から取りまとめ作業が行われてきた。関税、規制調和、金融サービス、安全保障、航空、漁業などの個別問題について英国政府の方針を具体的に提示し、10月までの最終合意を目指すEUとの交渉に反映させる。デービッド・デービスEU離脱相はこの白書について「(離脱を決めた2016年6月の)国民投票以降で最も重要なものになる」とコメントしている。

関税政策めぐり閣内は真っ二つ

しかし、英国政府が明確なEUとの将来の関係方針を示すのは、極めて難しい状況にある。特に離脱後の関税政策については、英国を経由してEUに輸入される貨物の関税を英国がEUに代わって徴収する「関税パートナーシップ」案と、先端技術を駆使して国境での通関手続きを最小限に抑える「最大円滑化」案をめぐり閣内が真っ二つに割れている。後者を推すボリス・ジョンソン外相は5月7日、メイ首相らが推す関税パートナーシップ案を「常軌を逸している」と痛烈に批判。閣内の意見統一は容易ではない。

下院の幹部議員らも調査報告書の中で、政府に同案の破棄を要求(BBC5月2日)。さらに上院は、EU関税同盟への残留を求める姿勢を鮮明にしている(2018年4月24日記事参照)。政府・議会は関税政策をめぐってなお紛糾しそうだ。

もっともEU側は、いずれの案も現実的ではないと考えている。英国との陸の国境を持つ唯一の国アイルランドのレオ・バラッカー首相は、2案とも機能しないとの見解を示している(ロイター5月15日)。

これらの重要事項がまとまらないまま、交渉がずれ込む可能性も高まりつつある。EUのミシェル・バルニエ首席交渉官は5月14日、英国との交渉はほとんど進展がなく、不透明感が高いとコメントしている(2018年5月15日記事参照)。しかしデービッド・リディントン内閣府相は5月16日、BBCの取材に対し、2020年末までの移行期間の延長を白書で求めることはないと述べ、白書では英国とEUの長期的な関係を示すことを強調している。

(宮崎拓)

(英国)

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