鉄鋼をめぐる「報復の連鎖」を警戒するEU

(EU)

ブリュッセル発

2018年04月26日

欧州委員会は、4月23日付で公開した書簡で、鉄鋼をめぐる米国の追加関税措置に対して世界各国が対抗措置で応じた場合、EUから世界市場への輸出が制限されるリスクがあるとの見解を明らかにした。

この書簡は、イタリアの主要鉄鋼メーカーであるマルチェガリア(本社:イタリア・マントバ)が3月16日付で欧州委に提出した意見書に対する回答書として、欧州委のセシリア・マルムストロム委員(通商担当)が出状したもの。欧州委は3月26日に鉄鋼製品に関する緊急輸入制限(セーフガード)調査を開始すると発表(2018年3月28日記事参照)している。この書簡で、欧州委は「セーフガード調査の狙いは、米国の通商拡大法232条に基づく輸入制限措置に伴うあらゆる悪影響からEUの産業を守ることにある」としているが、同時に、米国の措置に反発する世界各国が類似の措置を発動した場合、EUからの輸出にとって(世界への)市場アクセスが制限されるリスクもあると指摘。こうした事態は「逆効果」であり、「回避すべき」との認識を示した。

欧州委に意見書を提出したマルチェガリアは、鉄鋼生産が年産560万トン、年商50億ユーロに達するイタリア企業で、ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)のエマ・マルチェガリア会長の出身企業でもあり、同会長が兄のアントニオ・マルチェガリア氏と共同で最高経営責任者(CEO)を務めているという特殊性がある。同社は欧州委に提出した意見書で、(1)米国の追加関税賦課の影響を受ける全ての鉄鋼製品をEUのセーフガード調査の対象にすべきこと、(2)米国の措置による「ゆがみ」のみではなく最近の貿易傾向に基づいた最もバランスの取れた措置、を検討することを求めていた。

(前田篤穂)

(EU)

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