ブレグジット以降も、英国はEU規制に準拠を

(EU、英国)

ブリュッセル発

2018年04月11日

欧州委員会で英国のEU離脱(ブレグジット)交渉の総責任者を務めるミシェル・バルニエ首席交渉官は4月10日、ブリュッセルで開催された欧州の環境保護ネットワーク(グリーン10、注)主催のイベントで、あいさつに立った。

英国とのFTAも視野

バルニエ首席交渉官は、2016年10月の就任(2016年8月1日記事参照)以来、英国に対して抱いている疑念として次の3点を挙げている。(1)英国は秩序あるEU離脱と無秩序なEU離脱のどちらを望んでいるのか、(2)英国はEUとのどのような将来関係を望んでいるのか、(3)英国はEUの規制モデルに準拠し続けるのか否か、の3点だ。

(1)について、バルニエ首席交渉官は先月(3月19日)の英国政府との合意で、解決の道筋が立ったとし、互いの国・地域に居住する双方市民の権利保障と財政問題の解決(清算)については最優先課題として協定案に合意できたとした。加えて、2020年12月末までの移行期間(21カ月)についても政治合意したことを評価、その他の課題についても大きく前進したと語った。他方、「アイルランドと北アイルランドの国境問題」や「離脱協定のガバナンス」については、双方の認識に隔たりがある点や、「地理的表示(GI)保護」「警察・司法協力」についても課題が残されている点を指摘した。これらの課題は2018年10月までには決着を付けたいとした。

(2)については、英国のテレーザ・メイ首相は3月2日の演説(2018年3月5日記事参照)で、英国がEU単一市場、関税同盟から離脱することは明らかになり、唯一可能な選択肢はEU・英国間の自由貿易協定(FTA)だとの認識を示した。

(3)については、「公平な競争や国家補助、税のダンピングや社会基準、環境基準に対する保証などの共通基盤がなければ、野心的な連携関係は構築できない」と指摘。さらに、大気汚染防止からリサイクル推進に至るまで、「高水準の環境保護政策を担保しているのはEU規制だ」と強調した。

公平な競争環境確保のためには共通の環境基準が必要

EUと英国の関係について、(1)両者の将来関係の前提には、特に環境基準が対等な競争条件(レベル・プレイング・フィールド)が含まれること、(2)英国はこれまでの環境政策に関わる国際合意の履行が求められること、の2点が重要な論点とした。特に(1)について、バルニエ首席交渉官は「対等な競争条件(の前提)がなければ、英国が競争優位性を確保するために、今後、環境保護水準の引き下げに動くリスクがある」と警告した。

(注)欧州環境事務局(EEB)、フレンズ・オブ・アース・ヨーロッパ、トランスポート&エンバイロメント(T&E)など欧州を中心とする10の環境非政府組織(NGO)、市民団体からなる環境保護のための横断的ネットワーク組織。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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