欧州委、「労働者・自営業者の社会的保護へのアクセスの確保に関する勧告案」を提案

(EU)

ブリュッセル発

2018年04月09日

欧州委員会は、「労働者・自営業者の社会的保護へのアクセスの確保に関する勧告案」を発表した。域内の労働者の移動に関するより円滑な対応の実現を目的とする「欧州労働監督機関(European Labour Authority)の創設に関する規則案」(2018年4月6日記事参照)と併せて発表された。

新たな労働形態への対策も視野

同勧告案は、労働市場の柔軟化と労働形態の多様化によって新規雇用が創出された一方で、労働者の間で生じた社会的保護の格差に対処することを目的とするものだ。特に、デジタル技術の普及に伴って生じた、新たな労働形態への対策も視野に入っている。

欧州委は、無期限のフルタイム勤務以外の非従来型(atypical)の雇用契約を結ぶ労働者と自営業者が就業者の40%近くを占めており、社会保障や失業保険、年金などで不利な条件に置かれていると指摘。この勧告案は、全ての労働者と自営業者が社会的保護にアクセスできるように、加盟国に対する指針を示すものだ。

具体的には、全ての労働者・自営業者が社会保障に加入できるようにすること、社会保障制度の利用者として適切な受給資格を得られるようにすること、転職時に社会保障の受給資格を容易に移転できるようにすること、社会保障の受給資格と義務に関する情報の透明性を高めることを求めている。

中小企業経営者などは慎重姿勢

欧州の伝統工芸品職人や中小企業経営者で構成される欧州手工業・中小企業連合会(UEAPME)は欧州委提案が発表された3月13日に声明を発表、UEAPMEのベロニク・ウィレムス事務局長は、「欧州における自営業者の社会的保護には改善の余地があるが、社会保障が義務化されれば自営業者に負担できない水準となる恐れがある。イノベーションと雇用創出を害さないよう、注意深く実施すべき」との見解を示した。また、インターネットを通じて単発で仕事を受注する「ギグ・エコノミー」について懸念を示しつつも「起業家精神を損なう拙速な解決策は避けるべき」との認識を示した。

(村岡有)

(EU)

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