米の輸入関税適用除外を歓迎-外国産鉄鋼・アルミ製品の大量流入を業界は警戒-

(カナダ、米国)

トロント発

2018年03月20日

米政府による鉄鋼・アルミニウムへの輸入関税適用から一時的に除外されたことを受け、カナダの経済界や産業界は一斉にコメントを発表した。経済団体や業界団体は今回の措置をおおむね支持すると表明したが、米国の関税を回避するため、安価な外国産鉄鋼・アルミニウム製品が大量に流入しないか、懸念する声が上がっている。

米政府の判断に安堵・歓迎の声相次ぐ

カナダ製造・輸出業者協会(CME)は、米国政府が鉄鋼とアルミニウムに対する輸入関税の適用対象からカナダを一時的に除外したことに安堵(あんど)したと表明した。デニス・ダービー会長は「加米のサプライチェーンは高度に統合されているので、新たな関税は両国の産業に壊滅的な影響をもたらすだろう。CMEは、カナダ連邦政府がこの重要な問題にさらに力を入れて取り組むことを支持し、カナダ産鉄鋼製品の適用除外が継続されることを求める」とした。

カナダ商工会議所(CCC)も米政府のカナダに対する措置を歓迎しつつ、除外を恒久的なものとするとともに、米国による関税賦課措置を北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉に関連付けるべきではない、との声明を発表した。ペリン・ビーティ会頭は「カナダは例外なく関税適用から除外されるべきだ。カナダはNATOおよび北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)における米国のパートナーであり、カナダの鉄鋼とアルミニウム産業は、米国企業や防衛産業にとって極めて重要な供給源となっている」との見解を示した。

カナダの鉄鋼やアルミニウムの業界団体も、米国政府の適用除外措置を歓迎している。カナダ鉄鋼業協会(CSPA)は、カナダの鉄鋼生産者と労働者は今回の適用除外措置を支持すると発表した。ジョー・ギャリムバーティ会長は「カナダ政府の尽力に感謝する。われわれの統合された市場は開かれ続け、それぞれのサプライチェーンがともに成長するため、加米間の対話を支持し続ける」と述べた。

カナダアルミニウム協会(AAC)のジョン・シマー会長は「今回の米政府の措置は前向きな一歩であり、北米におけるアルミニウム供給基地としてカナダの役割を認めるものだ。われわれの最終目的は、例外なき適用除外を継続し、カナダ連邦政府およびケベック州政府、米国のパートナーとともに、完全かつ恒久的な適用除外の方法を見付けることだ」とした。

政府は産業界と対応策を協議

一方、今回の一時的な適用除外措置は十分ではないとの意見もある。カナダの鉄鋼生産の中心地であるオンタリオ州ハミルトン港湾局のイアン・ハミルトン局長は「(適用除外は)てこに使われているだけで、これで終わりとは思わない」との見解を示した(ロイター3月11日)。また、ケベック商工会議所は、今回の米国政府の措置は加米経済の脅威となる旨の声明を発表した。アルミニウムの主産地ケベック州の業界団体では、関税の不確実性に対し警鐘を鳴らしている。CMEおよびCCCは、米国の関税を回避するために、外国産の鉄鋼とアルミニウムが第三国から流入することを懸念している。カナダ連邦政府関係者によると、外国産鉄鋼やアルミニウムの大量流入を阻止するための最善策を産業界と協議しており、具体的には、国境における検査官の増員や、ダンピング阻止を目的とした高い関税の賦課などを検討しているという。

(伊藤敏一、ジョニー・タン)

(カナダ、米国)

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