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外資系企業向け税制優遇措置を抜本的に見直し

(フィリピン)

マニラ発

2018年03月29日

フィリピン政府が推進する税制改革の第2パッケージ法案が3月21日下院に提出された。法人所得税の税率を現行の30%から毎年1ポイントずつ引き下げるとともに、加工組立産業やIT-BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)産業を担う外資系の輸出企業に適用されてきた税制優遇措置を抜本的に見直す法案となる。多くの進出日系企業への影響が懸念されている。

法人所得税率を2019年から段階的に引き下げ

フィリピン財務省は第2パッケージ案で「他のASEAN主要国に比べて、フィリピンの法人所得税率は高いが、GDPに対する法人所得税収の比率は低く、より効率的な課税方法が必要だ。また、外資系の輸出企業に対して手厚い税制優遇措置を用意している割には海外から投資を誘致できていない。GDPに対する対内直接投資額の比率は低く、GDPに占める輸出の割合も減少している」と問題提起している。その上で、外資系の輸出企業を厚遇する現行措置を見直し、「実際に投資を行い、雇用を創出し、輸出、地方開発、研究開発などに貢献する国内外の企業を精査して、税制優遇措置を適用すべき」とし、具体的には次のような改革案を国会に提出する方向で、関係各界と協議を重ねてきた。

  1. 輸出企業の定義を変更し、売上高における輸出比率を70%から90%に引き上げる。また、「戦略的投資優遇計画〔貿易産業省の投資委員会(BOI)が作成し、大統領が承認。計画期間は3年〕」に該当する事業を行う国内企業も、輸出企業と同様に優遇措置の対象とする。
  2. 2019年1月1日から、法人所得税率を現行の30%から毎年1ポイントずつ段階的に引き下げる(ただし、20%を下限とする)。
  3. フィリピン経済特区庁(PEZA)など貿易産業省が所管する14の投資誘致機関が個別に定めてきた123もの税制優遇措置を統一し、今後は財務省と貿易産業省、各投資誘致機関が共同で優遇措置を管理する。
  4. 法人所得税に関する優遇措置は今後、最長3年の法人所得税免除に続いて2年間の優遇期間(法人所得税率を15%とし、登録事業に関する投資、研究開発、訓練、労務などの経費を損金算入することを認める)を設けるにとどめる。なお現在、法人所得税を免除されている企業は既定の期限を迎えた時点で優遇措置を終え、売上総利益の5%を課税されている企業は登録事業の経過年数によって優遇措置終了までの移行期間が決まる(事業登録からの経過年数が10年以上→残り2年、5~10年未満→残り3年、5年未満→残り5年)。
  5. 現在、登録事業に要する設備およびその部品、原材料の輸入関税は無期限で免除されているが、今後は5年間に限り関税を免除する。
  6. 付加価値税の免除は廃止する。
  7. 地方税に関する優遇措置は廃止する。

PEZAによる一元的機能が低下する懸念も

税制改革第2パッケージが施行された場合、日系企業に影響し得る点として以下の2つが挙げられる。

1つ目が、PEZAの「ワンストップサービス」を活用できなくなる点だ。多くの進出日系企業はPEZA認定の輸出加工区/ITパークで、加工組立型の製造業や、コールセンターやソフトウエア開発、設計などのIT-BPM事業に従事している。固定資産税や事業税の査定や課税の権限が地方自治体に移管され、関税が免除されない場合、これまでPEZAを通じて一元的に各種の許認可や税務の手続きを行ってきた進出日系企業は、日々こうした案件への対応に追われる可能性がある。

2つ目は、フィリピン投資環境の優位性の低下だ。ジェトロの調査では、フィリピンの投資環境は「英語でコミュニケーションできる、優れたワーカーを比較的低い報酬で多数確保できること」と「優れた税制優遇措置」の2点が特に高く評価されている。法人所得税率を財務省案のとおり引き下げても、他のASEAN諸国と比べて同等または割高で、今回の改革で税制優遇措置が廃止・縮小された場合、輸出加工基地、IT-BPM大国としてのフィリピンの優位性は低下してしまう。

外資系に影響、望まれる慎重な移行措置

政府は、大型のインフラ整備計画に必要な財源を確保する必要があることから、税制改革の早期施行を目指している。また、政府や議会で連邦制の導入が検討されている中、財務省は地方の独自財源を確保する観点から、地方税を外資系企業向け税制優遇措置の対象から除外し、地方自治体が制度を直接管理・運用することが望ましいとの見解を示している。

他方、外資系の輸出企業がフィリピン経済に大きく貢献している状況下で、そのビジネス環境を大幅に見直すに当たっては、中長期的なビジョンに基づいた慎重な議論と措置が望まれる。例えば近年、内需拡大に連動して輸入も増え続けているが、加工組立産業やIT-BPM企業による製品やサービスの輸出拡大が、貿易赤字の拡大を相当に抑えている。これらの輸出産業は大規模で安定的な雇用を創出しており、激変を緩和する移行措置が不可欠だ。

さらに、フィリピンの製造業は食品加工と輸出向け加工組み立てが中心で、国内向け製造業と裾野産業が十分に発展していない。輸出企業の資格要件を70%から90%に厳格化するよりも、むしろ輸出向け製造業の国内取引を拡大して外資系企業から国内への技術移転を促し、輸入代替型の製造業を育成するような施策を期待したい。

(注)現在、BOI登録企業は4~6年間にわたり法人所得税を免除される。最長で累計8年まで免除期間を延長することができる。また、PEZAの輸出加工区/ITパークに立地する製品やサービスの輸出企業と(加工輸出に従事する)貿易企業は、登録事業(優遇措置の適用対象となっている事業)の開始から3~6年は法人所得税が免除され、それ以降も無期限に売上総利益の5%のみが課税される。

(石原孝志)

(フィリピン)

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