事業所の設立要件緩和、24時間営業も可能に-マハーラーシュトラ州で関連法律が70年ぶりに改正-

(インド)

ムンバイ発

2018年03月30日

マハーラーシュトラ州で、店舗および施設、雇用条件に関する法律が約70年ぶりに改正され、2017年12月19日に施行された。原則として午前8時から午後9時30分までと決められていた店舗の営業時間が、特定の業種に関しては24時間が可能となった。事業所の設立要件も大幅に緩和されており、サービス産業の一層の集積が期待されている。

10人未満の事業所は設立届のみ

インド中西部マハーラーシュトラ(MH)州では2017年12月19日、「2017年店舗・施設(雇用・営業条件規制)法」〔英語名:Maharashtra Shops and Establishments (Regulation of Employment and Conditions of Service)Act, 2017〕」が施行され、事業所の設立要件が大幅に緩和されるとともに、特定の業種については24時間営業が可能となった。

これまでは1948年に施行された同種の法律の規定が、労働者数にかかわらず全ての事業所の設立要件とされていたが、新法では労働者が10人以上の場合にのみ適用され、10人未満の場合は設立を届けるだけで済むこととなった。登録の有効期間もこれまでは1~3年だったが、新法では最長10年までとなった。

また、これまでは原則として午前8時から午後9時30分とされていた店舗の営業時間も改定され、小売業やショッピングモール、レストランなどは24時間営業も可能となる。一方で、この営業時間の緩和はバーやディスコ、酒類販売店などには適用されない。

サービス産業の集積州に追い風

インド最大の商業都市ムンバイのあるMH州はサービス産業が集積しており、サービス産業の実質粗付加価値(GVA)成長率は、インド全体に比べて高い数値で推移している(図参照)。

図 マハーラーシュトラ州とインド全体のGVA成長率の推移(サービス産業部門)

また、ムンバイでは日系の小売りをはじめサービス産業の進出が目立つ。例えば、南ムンバイの大型ショッピングモール、ハイストリート・フェニックスには無印良品を展開する良品計画や菓子販売のロイズ、下着販売のワコールが出店し、ヨックモックは同じくムンバイ南部に路面店を構えている。バンダイナムコもムンバイ北部のショッピングモールにアミューズメント施設を出店している。

このようにサービス産業が成熟し、サービス業の増加が見込まれるMH州にとって、新法の施行は追い風となることが期待されており、地元紙は、約220万社に恩恵がもたらされるだろうとしている(「タイムズ・オブ・インディア」紙2017年12月20日)。

依然高い人件費がネックに

インドでビジネスを行う上では、毎年の賃金上昇が大きな課題となっている。インド日本商工会の「賃金実態調査」によると、MH州ムンバイの過去3年間の非製造業の賃金上昇率は11.2%(2014年)、10.6%(2015年)、9.0%(2016年)と、伸び率は年々低下傾向にあるものの、依然として売り上げや利益の伸び率を超える人件費上昇がネックとなっている。ジェトロ・ムンバイ事務所が現地調査会社と行った調査では、市街地の飲食店では前年比で最大70%近い上昇例もあった。近年、高級ブランドを掲げる店舗設置が活発になり、スタッフに求められる能力や質が高まっていることが理由の1つとして考えられている。

(比佐建二郎)

(インド)

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