交通インフラ整備が加速する広州市増城開発区-投資視察ミッションを実施-

(中国)

広州発

2018年01月04日

ジェトロは10月25日、広東省商務庁との協力により同省広州市の増城経済技術開発区への投資視察ミッションを実施した。ミッションには広州市などから製造業、建設業、商社、銀行、物流など20社26人が参加し、同区の交通インフラ整備状況の視察および同区の代表的中国企業や現地進出日系企業への訪問を行った。

日系企業27社が進出

増城区は広州市の東部に位置し、東莞市と隣接しており、面積は1,616平方キロ。視察先の増城経済技術開発区(以下、開発区)は1988年に設立され、2010年3月に国家レベルの経済技術開発区に昇格した。開発予定総面積は70平方キロ、うち26平方キロが開発済みだ。増城区商務局によると、日系企業は27社が進出している。

ミッションではまず、中信泰富・凱達尓枢紐国際広場(International TOD/Traffic Centre)を訪問し、同センターを中心とするインフラ整備プロジェクトの現状と今後の計画について紹介を受けた。

同プロジェクトは交通、商業、住居を一体化した総合開発プロジェクトで、総面積は35万平方メートル。2018年に商業エリアが開業し、2019年にはホテルやオフィスが入居する高層ビル2棟が完工する見込みだ。また、交通については、高速鉄道3本、都市間鉄道2本および地下鉄2本の計7本の鉄道が集中する「広州東部交通ハブセンター」を建設する予定だ(注)。

同センター以外に、開発区を囲むかたちで貨物輸送ターミナルおよび増城駅(広州と汕頭、アモイ、上海、北京を結ぶ高速鉄道が停車する駅)が建設・計画中だ。将来的には、コンテナ港である黄埔港、新沙港まで15分、省内の2つの国際空港である広州空港、深セン空港まで30分で到達でき、珠江デルタの主要各都市にも1時間以内に到着できるようになる。

交通の便の良さが進出の理由

次に、アリババ傘下の物流会社である菜鳥網絡が運営する華南地域の電子商取引(EC)物流センターを見学した。同社は、開発区に7つの物流倉庫を構え、総面積は23万平方メートル。うち、4つの倉庫がアリババのECサイト「天猫」(Tモール)の物流機能を担っている。同社は開発区に進出した理由として、最も近い高速道路の入り口まで10分以内で行けることのほか、仏山市、恵州市、東莞市、広州市花都区など珠江デルタ内の主要都市の多くにアクセスしやすい地理的な優位性を挙げた。

進出日系企業では、日立オートモティブシステムズが広州市増城に有する製造拠点である日立汽車系統(広州)を訪問した。この製造拠点は、エンジンおよびブレーキ制御関連の自動車部品の製造・研究開発を行っている。2013年に操業を開始し、敷地面積は17万5,000平方メートルと、同社の中国生産拠点では最大だ。

増城に進出した理由として、(1)広州市を中心に日系や欧米系の自動車メーカーが集積していること、(2)国家レベルの開発区であるため、将来的に発展が期待できると考えたことを挙げた。進出の決定後、周辺のインフラ整備が急速に進んだことも利点になったという。

ローカル企業との取引拡大が課題

同社は、今後は現地企業との取引拡大にも力を入れる必要があり、そのためには顧客の要望に応えるスピード感とコスト競争力が必要とした。

(注)高速鉄道は広州~深センを結ぶ「広深」、広州~汕頭を結ぶ「広汕」、北京~香港を結ぶ「京九」の3本、都市間鉄道は広州~東莞~深センを結ぶ「穂莞深城際鉄道」および広州市の大型コンベンションセンターである琶洲と直結する支線の2本、地下鉄は13号線と16号線の2本。

(黄冬瑩)

(中国)

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