乗用車の輸入関税を大幅に引き上げ-国内生産する外国企業には優遇措置-

(イラン)

テヘラン発

2018年01月23日

政府は12月30日、乗用車輸入に係る新規制を発表した。新規制では、輸入関税率の大幅引き上げや、国内で現地生産などを行う外国企業に対する関税優遇などが盛り込まれ、即日実施された。また、新規制が検討されていた約半年間、貿易振興庁は乗用車の新規輸入許可の申請受付を停止していたが、新規制発表後は再開している。

ハイブリッド車やPHVも大幅引き上げに

2017年12月30日、乗用車輸入に係る新規制外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(リンク先はペルシャ語のみ)が内閣府から発表された(即日実施)。従来の規制からの主な変更点は、以下のとおり。

  • 関税率の大幅の引き上げ
  • 国内で現地生産などを行う外国企業への関税優遇
  • CFR(運賃込み渡し)価格4万ドル超の乗用車の輸入禁止

改定後の乗用車の輸入関税率は表のとおりだ。ガソリン車およびディーゼル車のみならず、従来は関税率が低く設定されていたハイブリッド車とPHV(プラグインハイブリッド車)の関税率も、大幅に引き上げられた。

表 乗用車の輸入関税率(単位:%)
品目 改定前 改定後
ガソリンエンジン車(1500cc以下) 40 55
ガソリンエンジン車(1500超~2000cc) 40 75
ガソリンエンジン車(2000超~2500cc) 55 95
ディーゼルエンジン車(1500cc以下) 32 55
ディーゼルエンジン車(1500超~2000c) 32 75
ディーゼルエンジン車(2000超~2500cc) 40 95
ハイブリッド車(1500cc以下) 5 25
ハイブリッド車(1500超~2000cc) 5 45
ハイブリッド車(2000超~2500cc) 5 65
ハイブリッド車(2500cc超) 55 100
PHV(1500cc以下) 5 15
PHV(1500超~2000cc) 5 35
PHV(2000超~2500cc) 5 55
PHV(2500cc超) 55 95

(出所)内閣府通達

一方で、イランへ投資を行い、イラン国内で乗用車または乗用車部品を生産する外国企業に対しては、輸入関税が優遇されることとなった。具体的には、国内での生産額の20%相当額までの乗用車輸入については、関税率が当該税率の80%となる。ただし、「国内での生産額」は産業鉱山貿易省により決定されることとなっており、生産額の計算方法や関税減免の認定プロセスなど、優遇を受けるに当たり不透明な点が残っている。

首都テヘラン市内ではポルシェなどに代表される高級車を見掛けることは珍しくないが、CFR価格4万ドル超の乗用車の輸入が禁止になったため、今後はこれら高級車はあまり見られなくなりそうだ。輸入に際し、輸入者は貿易振興庁ウェブサイト(http://sabtaresh.tpo.ir/、ペルシャ語のみ)から事前に輸入登録を行う必要があり、同ウェブサイトで輸入登録可能な乗用車のリストを確認することができる。1月14日現在、リストの中にポルシェやメルセデス・ベンツの名前は確認できない。なお、今回の新規制については、2017年夏ごろから、政府内で検討されていた。その間、貿易振興庁は乗用車の新規輸入許可の申請受付を停止していたが、新規制発表後は再開している。

(藤塚理)

(イラン)

ビジネス短信 a124b9f0984db059