ミレニアル世代向け月額制家具レンタル会社が350万ドルを調達-米国のサブスクリプションビジネス(4)-

(米国)

サンフランシスコ発

2018年01月11日

米国でファッション、コスメ、自動車などさまざまな分野にサブスクリプションサービスが広がりをみせる中、近年、投資家から注目を集めるスタートアップ企業の1つに、家具レンタルのフェザーがある。連載の最終回。

価格とサービスで競合他社を圧倒

これまでの家具レンタルサービスというと、高額なレンタル料を徴収するものや、レンタル料が手頃でも品質、デザインとも最低限の家具を提供するものが主流だった。そんな状況を変えるために登場したのが、月額制で家具をレンタルするフェザー(本社:ニューヨーク)だ。

同社の商品ラインアップには、ベッドやソファ、テーブルなどの住宅向けのもののほか、会議用テーブルやデスクなどのオフィス家具も並ぶ。家具以外にも、間接照明や鏡などのインテリア雑貨のほか、スポットエアコン、冷蔵庫、電子レンジなどの電化製品やホワイトボードなども取り扱う。同社のサービスを利用するには、同社ウェブサイトから希望する家具、レンタル期間を選び、届け先を登録し、料金を支払う。すると、指定した届け先に家具を配達してくれるというシステムだ。家具の組み立てや撤去時の解体は、同社の運搬スタッフが行う。

サービスの仕組みは他社と大差はないが、一線を画しているのは価格だ。2人掛けソファの例では、競合A社の月額最低価格は39.5ドルなのに対し、フェザーは20ドルだ(12月19日時点)。

また、複数の家具と照明器具がセットになったパッケージは、A社のクイーンサイズのベッド、マットレス、ドレッサーと鏡、ベッドサイドテーブル、卓上ランプが含まれる寝室セットが月額120.5ドルから、二人掛けのソファ、ローテーブル、椅子、間接照明の4点が含まれるリビングルームセットは114.5ドルからとなっている。一方でフェザーは、鏡は含まれないがそれ以外の5点の家具が含まれる寝室セットは99ドルから、リビングルームセットは59ドルからとなっている。寝室セットに、フェザーが提供する低価格の鏡(11ドル)を追加したとしても総額は110ドルで、競合他社を下回る価格を設定している。

洗練されたデザインのものを取りそろえる

家具の品質とデザイン性をみても、フェザーは競合他社とは違っている。前述のA社の家具は品質とデザイン性が評価されていないが、フェザーは高品質な家具のみを調達しているほか、モダンで洗練されたデザインのものばかりを取りそろえているという。

このように、高品質でデザイン性の高い家具を低価格で提供する、これまでにないスタイルを確立したフェザーは投資家からの注目を集めている。2017年10月に、クレイナー・パーキンス・コーフィールド&バイヤーズ、ベインキャピタル・ベンチャーズ、Yコンビネーターなどの著名なベンチャー投資会社から350万ドルの調達に成功したと複数のメディアが報じている。

狙いは引っ越しを繰り返すミレニアル世代

フェザー設立のきっかけとなったのは、設立者のジェイ・レノ最高経営責任者(CEO)が、ニューヨーク市内のアパートから別のアパートへ引っ越した時のことだったという。厳しい寒さの中、終日、新旧のアパートを往復して家具を運び入れた後、オンライン広告サイトで見つけたソファを引き取り、夜遅くなってから新居に運ぼうとした。ところが、新居の階段の横幅が狭すぎてソファを搬入することができず、売却を余儀なくされた。その際に同氏は、家具の搬入にかかる時間や、肉体的、身体的負担の大きさを実感し、家具の購入、組み立て、移動、売却など、家具の所有によって生じる煩わしさを感じずに生活するためのサービス立ち上げを考えたのだという。

そんなフェザーがターゲットとするのは、賃貸物件に暮らすミレニアル世代だ。この世代は、その上の年代よりも引っ越しをする頻度が多いといわれ、「フォーブス」誌が2016年10月に報じたセンサス局の情報によると、移動人口の4割以上を占めるともいわれる。テクノロジーのオンライン情報サイトベンチャーのビートの取材(10月19日)に、レノ氏は「(同世代は)就職してから住宅を購入するまでに、約12回引っ越しする。(頻繁に引っ越しを繰り返すため)家具を所有することは理にかなわない」と述べている。

またレノ氏は、同世代が「アメリカンドリームの(象徴である)マイホームを持つことを求めない。(住宅や家具など)モノの所有は所有者を一定の場所に縛り付け、生活を送る中での柔軟性を奪う」との認識を示したと、eコマースのオンライン情報サイトのペイメント・ドットコム(10月30日)が伝えている。

このように、引っ越しを繰り返す上に、モノの所有への執着が薄いミレニアル世代の支持を期待するフェザーは現在、ニューヨーク都市圏とサンフランシスコ・ベイエリアでのみサービスを行っている。しかし今後は、海岸沿いの都市部を手始めに事業展開を目指すという。

(高橋由奈、永松康宏)

(米国)

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